スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年5月 7日 (土)

陸上日本選手権1000㍍ 女子は広中(優勝)と五島(3位)が世界陸上代表に内定 男子は内定者は出ず

7日=国立競技場 天候晴れ、気温19度、湿度81%、西北西の風0・6㍍ 7月15日に開幕する世界陸上(米オレゴン州)の代表選考会を兼ねた日本選手権1万メートルは、今大会までに参加標準記録(男子は27分28秒00、女子は31分25秒00)を突破した選手のうち、今大会で3位以内に入った選手が世界選手権代表に内定する規定で行われた。
 女子ではすでに参加標準記録を突破していた東京五輪7位入賞の広中璃梨佳(ひろなか・りりか 21=日本郵政グループ)が、31分30秒34で2連覇を達成し世界陸上代表の座を手中にした。同じく参加標準を突破し、この日3位に入った五島莉乃(ごしま・りの 24=資生堂)も同大会代表に内定。東京五輪5000メートル代表で、この日初めて10000㍍に挑戦した萩谷楓(21=エディオン)は、標準記録には届かなかったものの、31分35秒67での2位と大健闘。萩谷は、昨年出場した東京五輪5000㍍(予選で敗退)で、日本歴代6位の15分04秒95と、世界陸上標準記録を突破しており、これで5000㍍と合わせて、長距離2種目での代表入りも視野に捉えた。
 男子は、ただ1人標準を突破していた田澤廉(駒沢大)のほか、東京五輪代表の相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(ホンダ)、市田孝(旭化成)が中心になって展開。相澤が27分42秒85と、2位伊藤(27分47秒40)を振り切って日本選手権連覇を達成。ともに標準記録(27分28秒00)は突破できず、田澤は10位と3位以内の内定には届かなかったため、男子の内定者は出なかった。
 日本陸連は、北海道で行われるホクレンディスタンス(6月22日)で、男女ともにペースメーカーを付け、突破者を出すための計画を検討している。

           「帽子を脱いで、気持ちを切り替えた」広中璃梨佳
 膝の痛み、貧血、体調不良と、昨年入賞を果たした東京五輪を終えて「うまくいかないことのほうが多かった」と、広中はレース後吐露した。この日は、序盤から標準を切っている五島が先頭で主導権を握り、広中は「確実に3位以内を狙う」と、いつものように積極的に前に出るのではなく、少し走りにくそうになりながらも2、3番手でレース展開をうかがっていた冷静さは、苦しい中で掴んだ大きな収穫だったはずだ。
 7000メートル過ぎて先頭に立つと、残り6周に入ったところで、トレードマークの赤い帽子をフィールドに力強く投げ込んだ。その後、萩谷と2人のマッチレースに残り1周で決着をつけた。
 広中は「(有観客で)両親を含めて皆さんの歓声が背中を押してくれたから、諦めずに走れた。(帽子を投げたのは)切り替えるんだというのを自分に言い聞かせるためでした」と笑顔を見せた。広中が、帽子を投げて表現した強い気持ちに呼応するように、その瞬間スタンドにも大歓声が沸いた。有観客でのこうした一体感を感じながら走れたという。世界陸上代表に内定し、「世界陸上で世界にもまれながら、パリ五輪に向けてのステップにしたい」と、7月を見据えた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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