日本サッカー協会03年60憶円で購入した自社ビルを三井不動産に100億円で売却し移転 コロナ禍で使用機会が激減 これに伴い同居中のJリーグも移転へ野々村新チェアマン「費用対効果を検討する」
15日=オンライン 日本サッカー界が新年度に変わる体制、方針に大きな動きのある1日となった。午前中は、日本サッカー協会(JFA)が臨時理事会を開催し、03年に、当時約60億円のキャッシュで購入した地上11階、地下3階のサッカー界の総本山となった「自社ビル」(東京・文京区)「JFAハウス」売却を決定した。オンラインでの取材に応じた須原清貴専務理事は、「近日中に、三井不動産レジデンシャル株式会社と売買契約を結ぶ」と説明。売却金額は非公開だが、同専務理事によれば「100億円を超える売買契約になる」と見通しを明かした。
日本サッカー協会は、かつて東京・渋谷の「岸記念体育会館」3階に他の競技団体と同じように事務局を構えていた。そこから93年のJリーグ発足、W杯招致と日韓W杯の開催決定(1996年)、97年アジア最終予選でのW杯初出場定決定と、日本が世界へと活動範囲を大きく広げるに応じて移転。02年W杯日韓大会での黒字を背景に、売却金額からキャッシュ払いを条件に「値下げ」をし、03年、約60億円(当時)で購入した物件だった。
当時会長だった川淵三郎キャプテンは、物件の下見に自ら各ビルを回り、「ワンフロワーが広く、全員の仕事を互いに見渡せるのがとてもいい」と、電機会社のビルを購入。文京区の交通便の良さに加え、地下にスペースがあり、こちらも念願だったサッカー博物館の設置に好条件だった。床面積は延べ2万2994平方メートルの、日本サッカー界念願の自社ビルで地下展示場「JFAミュージアム」は、充実した展示で修学旅行でも人気を集め、昨年8月に68万人目の入館者を迎えていた。
須原氏によれば、この2年、コロナ禍によるテレワークの導入などで、1年間での事務局員のオフィス使用率は平均して19・5%にとどまり、JFAハウスに入る、「Jリーグ」などのテナントも同様で、見込まれる修繕費は今後の8年間で14億円を超えると試算されるという。
同氏は「資産をいかに効率的にサッカーの発展普及に使うかが使命。合わないのであれば変換していかないといけない。赤字が理由ではない」とし、約1年間の期間をめどに、オフィスの移転を進めたい考え。文京区残留も選択肢に入れつつ、千葉・幕張にあるJFA夢フィールドとも連携しながら「出勤率に合わせた面積の最適化、サテライトオフィスの設置など検討したい」と、資産売却の背景を話した。JFAミュージアムは今後も有効的に活用する方針だという。
臨時理事会では、元日本代表主将で、G大阪で監督を務めた宮本恒靖氏(45)が新理事に内定し、宮本氏を含め、この2年を最後の任期とする現体制から「ポスト田嶋体制」をも視野に入れた理事起用となる。元日本代表監督で「FC今治」会長の岡田武史氏(65)も副会長内定者として公表された(正式には27日の評議委員会で決定)。岡田氏はすでに、16年3月から18年3月にかけて副会長を1期(2年)務めた実績があり4年ぶりの復帰となる。15日に就任した野々村芳和・Jリーグ新チェアマンも、規定により日本サッカー協会の副会長に就任する。
JリーグはJFAハウスの9階に入居している。午後に就任会見に臨んだ野々村チェアマンは、「結論は出ていない」とした上で「サッカー業界が一緒のビルに入って働けるならそれに越したことはない。一緒になるのが理想とは思っている」と、これまでと同じく協会と同じビルでコミュニケーションをはかる希望を明かした。
しかし「働き方が変化していて、次に移った時にどれくらいの人がどのくらいの頻度で会社に来るのかなど(サッカーでもリモートワークも増えたため)働き方の変化も考えないといけない。費用対効果も含めて考える」と、必ずしも「同居」にはこだわらない方針も示した。