スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2022年3月24日 (木)

アディショナルタイムでW杯を逸して30年後、アディショナルタイムにW杯を掴み取った森保監督「(勝因は)監督の采配ではなく、選手のタフな戦いと準備の力」

 1993年、手をかけながら、アディショナルタイムで夢のW杯出場を果たせなかった悲劇を知る選手が、約30年後、今度は監督として、アディショナルタイムの劇的ゴールでW杯出場を掴み取る。森保一監督が、大一番となったオーストラリア戦を前に、「W杯は誰かが与えてくれるものではなく、自分たちで掴み取るもの」と強い口調で話したのは、その「掴み取る」思いを、自分自身に確認し、叱咤するようなものだったのかもしれない。

 W杯カタール大会出場を決めた後、オンラインで行われた記者会見に出席した監督は、MF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)を終盤の切り札として原口とともに起用した「攻めの采配」を聞かれると、「選手たちのタフな戦いと、準備があったから。彼らのことを称賛してもらえたらいい」と、笑顔もなく、いつも以上に感情を抑えた口調で言った。
 後半39分、日本はこのまま引き分けでも最終節のベトナム戦でドロー以上で勝ち点を奪いさえすれば、カタールW杯出場が決まる。しかし森保監督は「自分たちの手で勝ち取ろう」と、そういうメッセージも込めた交代カードを選択。三笘とMF原口元気(ウニオン・ベルリン)を投入し、動きが明らかに落ちてしまったオーストラリアに対し、アクセルをぐっと踏み込む攻撃で44分から、電光石火の三笘の2ゴールにつながった。
 森保監督は三笘の起用について「直近の試合(オーステンデ戦)で45分やっていて、代表の試合には十分使えるパフォーマンスを確認して招集した。使い方に関しては、こちらに集まってきて、コンディションを見て、攻撃の切り札として起用できると考えていた」と、起用法を説明し、「試合の流れと選手の疲労具合を見て、交代のカードを投じていく采配が当たったと言われることについてはありがたいと思う。しかし選手たちのタフな戦いと準備を称賛してもらえたらと思う」とした。
 「カタールW杯でベスト8を目指す」と立ち上げた森保監督の日本代表は、これで目標への挑戦権を得た形で、これまで例のない冬開催(11月21日~12月18日)となる。組み合わせ抽選会は4月1日(日本時間2日午前1時)にドーハで行われ、大会には32か国が参加する。26年大会(カナダ、メキシコ、アメリカの共催)からは48カ国と出場枠が大幅に拡大するため、アジア最終予選での戦い方も大きく変わる。

田島会長(試合後に広報を通じて発表) ワールドカップのチケットを獲得したこと、森保監督、スタッフ、選手たち、反町技術委員長に感謝したい。多くの選手たちを送ってくれたJクラブやヨーロッパのクラブの皆様にあらためてお礼を申し上げたい。ワールドカップの出場できることをとても嬉しく思いますが、これからが本大会でこれまで以上の成績を残すための本当の勝負が始まる。選手たちはすでにワールドカップに向けて取り組まなければいけないことを考えている。今後の強化をしっかりと行い、良いチームにしていきたい。29日のベトナム戦もしっかりと戦ってワールドカップにつなげていきたい。DAZNで応援してくれた皆様、ニッポン放送で応援してくれた皆様、スタジアムに足を運んでくれた多くのサポーターの皆様、日本から声援を送ってくれた皆様の応援が選手たちの大きな力になりました。あらためてファン、サポーターの皆様に感謝いたします


 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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