スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年10月27日 (水)

「ボロボロの内村航平も見たい。自分を強くするプライドもあれば、捨てるべきプライドもある」五輪柔道3連覇の野村氏の金言に、キング内村じっと聞き入る

27日=都内 体操の内村航平(32=ジョイカル)が、所属する車販売やリースの「ジョイカル」のオンライン全国会議に出席し(約300人が参加)、そのなかで、かねてから「一番話を聞きたい選手だった。五輪3連覇は僕にとってのレジェンド。(実現して)恐縮ですし光栄」と、憧れて続けてきた柔道男子60㌔級オリンピック3連覇を果たした野村忠宏氏(46)との初対談が実現した。24日に終了した世界体操(北九州)鉄棒では、東京五輪での落下、予選落ちまで全ての「着地」をするかのような完璧な着地を決めて、有観客の体育館内を感動と興奮に包み込んで6位に。しばらく休養すると明かし、体操界の「キング」の去就に注目が集まっている。野村氏は30歳でアテネ五輪での3連覇を達成しており、内村が去就を考えるうえで、年齢でも境遇でも「レジェンド」との対談が励みにもなり、答えになるかもしれない、との思いだったようだ。
次々と質問を繰り出す内村に対して野村氏は「引退後は長いので、生活に影響のあるようなけがはしないで」と助言したうえで、「個人的には40歳になった内村が、(演技)構成を落としても綺麗な演技をして、バチーンと着地を決めたらカッコいいと思う。あがいてボロボロになって(競技を続けている)いる内村航平も見てみたい」と進言。「プライドが自分を強くすることあるし、捨てるべきプライドもある」と、自身もひざ、肩の手術を繰り返しながら40歳まで現役を続けながら4回目の五輪出場にもチャンレジした理由を明かす。こうした濃密なキャリアを築くには「続ける権利も辞める権利も内村選手にしかない」と、決断にエールを送った。
 内村はイベント後「もう、勉強にしかならない(ほど良い話を聞いた)。2連覇の自分なんてホントちっちゃいな、と。(野村氏に)ボロボロになるまで見たい、と言われて選択肢は増えた。すぐにそうは決められないけれど、考えて、考えて、考え抜こうと思った」と、充実した表情で「公開悩み相談」ともいえる、率直で重厚な対談を終えた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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