男子サッカー銅メダルマッチへ 53年前の3決もメキシコ戦の因縁 森保監督は原爆投下の8時15分に黙とうを明言「銅メダルへの気持ちが強い方が勝つ」
5日=埼玉スタジアム 銅メダルをかけて6日、メキシコと対戦する(埼玉スタジアム、20時キックオフ)サッカーU24代表・森保一監督と、田中碧が公式会見に臨んだ。監督は、ここまで中2日で6試合目になる過酷なスケジュールをこなしている選手の疲労を考慮しつつも、「消耗戦になるが、銅メダルへの気持ちが強い方が勝つのではないかと思う」と、少しでも身心をリフレッシュして、タフに粘り強く戦うチームのサッカーへ信頼を寄せた。
過去、Aマッチ(フル代表同士の対戦)では1996年の初対戦以降、昨年11月の欧州遠征まで5試合で日本は1勝4敗。しかし4試合が1点差で、U24もチームが立ち上がってから19年の2試合はともにスコアレスドロー(19年トゥーロンは5-4のPK勝ち)、そして今大会のグループリーグでも1-2と、全試合が僅差で勝敗が決まって来ただけに、両チームとも過密日程で蓄積疲労するなかで「思い」が問われる部分が大きくなるかもしれない。
会見に出席した田中はこのチームがあすで解散する、と少しの寂しさを見せながらも「(五輪を)開催してもらって、素晴らしい環境を準備してもらい、こういう素晴らしい国と最、後にメダルをかけた戦いができるのを幸せに思う。だからこそ自分のメダルではなく、日本のため、日本サッカー界のために最後の恩返しとして勝って終わりたい」と、言葉に力を込めた。
8月6日は、原爆忌に。東京五輪期間中となったことから、広島は黙とうを要請したが、IOC(国際オリンピック委員会)は、8時15分に全会場で黙とうするのは困難だが、閉会式には平和へのメッセージが込められる、と黙とうは行わないとした。長崎で育ち、広島でプロへの道をスタートさせた森保監督にとって、9日と合わせ特別な日になる。監督は答える際、少し声を詰まらせて「オリンピックは平和の祭典だと思っている。期間中にこういう日が来るのは、選手、スタッフ、世界の皆さんと平和について考えることになる。亡くなられた多くの方々のご冥福を祈り、今も傷付いたままの方々の心が少しでも癒えるように8時15分には黙とうを捧げ祈りたい」とした。朝食前の時間になる。
1968年メキシコ五輪では2-0で開催国メキシコを下して銅メダルを獲得。チームを率いたのは、広島市出身の長沼健監督(後に日本サッカー協会会長就任、08年に亡くなった)だった。1945年8月6日、長沼氏は15歳で学校での当番から自転車で帰宅途中に被ばくし、多くの友人を生涯、白血球の異常に苦しみ被爆者手帳を持っていた。森保監督はもちろんこうした歴史が偶然にも交わる日となった運命に、平和へのより深い思いと先人へ敬意を持って試合に臨む。