スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年8月 6日 (金)

「このゲームの重みを理解できなかったのかもしれない。(メダル獲得できず)手ぶらで帰るの悔しい」涙の久保

 試合後号泣した久保は、それでもフラッシュインタビューに答えるために涙をぬぐった。グループリーグでは2-1で下したメキシコに対し、「今日、勝つと決めてきて・・(敗れたからの)結果論ですが、メキシコは予選で勝てた相手だったのでどこかで気の緩みがあったのかもしれない。このゲームの重みを理解できていなかったのかもしれない」と、敗因を精一杯分析して声を振り絞った。今大会グループリーグでは、史上初の3試合連続ゴールなど得点力でグループリーグを突破し、メダルマッチまで引っ張ったが、準決勝のスペイン戦では何もさせてもらえず、この日もシュート2本。「この負けは重い。結果的に手ぶらで家に帰ることになって今までのサッカー人生でこんな悔しいことはない」と話した。レポーターから慰めの言葉をかけられたが、それにも首を振った。
 この日はベンチからスタートした板倉は試合後の会見に森保監督と共に臨んだ。「ベンチから見ていても力を振り絞って戦っていたと思う。ハードワークしていた。ただ勝負強さ(が違った)・・・負けたことが全て」と、悔しさをにじませた。U24のカテゴリーはこの日で終わった。しかし9月から始まる最終予選、代表の底上げは今後急務だ。人目をはばからず泣き続けた久保、会見で監督と同時に飛んだ質問に対して「僕が先に答えます」と、監督より先に負け試合についてのコメントを発した板倉。チームを象徴した2人の悔しさと、それを正面から受け止めた姿勢は、53年ぶりに手をかけたメダルのほんのわずかだが、手に残るかけらになるだろうか。

 

[ 前のページ ] [ 次のページ ]

このページの先頭へ

スポーツを読み、語り、楽しむサイト THE STADIUM

増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

最新記事

スペシャルインタビュー「ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦」