スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年8月21日 (土)

24日開幕のパラリンピック関連の感染者は101人に 五輪中熱中症搬送の選手は6人「パラではよりきめ細やかに対応する」組織委員会中村チーフ

21日=東京ビッグサイト(オリンピック・パラリンピックメインプレスセンター)東京五輪・パラリンピック組織委員会が会見を行い、五輪期間中に熱中症が疑われる症状を訴えたのは選手を含み150人(選手59人、91人は組織委員会職員、ボランティアなど)、そのうち選手6人と、組織委員会職員、ボランティアの合計8人が救急搬送され、入院はなかったと明らかにした。データは先月21日から8月8日までのもので、総務庁消防庁の週ごとの都内の速報値発表によれば、7月19日から8月8日まで1600人弱が熱中症で救急搬送されている。
起点が、7月21日と19日(組織委員会発表)の違いはあるが、組織委員会は大会メディカルスタッフの「熱射病と診断されたのは2例で、ともに入院の必要がなく回復した」とのコメントを紹介しており、重症者が出なかったのは、選手、ボランティア、スタッフなど個人、参加国、競技別チームなど組織でも暑さ対策への意識の高さと、準備に成果が見られたと取れる。
パラリンピック中の熱中症対策についても、体温調整が難しい疾患を抱えた選手もいるため、一層の慎重さが求められる。組織委員会MOC(メインオペレーションセンター)中村英正チーフは「パラリンピックの選手の事情を踏まえ、新型コロナ対策と同様、気をつける点を関係者で共有しながらきめ細かく対応していく」とした 

 また五輪中の女子サッカーではカナダ、スウェーデン両国から当初午前11時から国立競技場で行われるはずだった決勝の時間変更について、ドクターの所見を交えた要望書が出され、これをIF(国際競技連盟、サッカーの場合はFIFA=国際サッカー連盟)が検討。女子決勝を21時から横浜国際競技場に変更したため、日本とメキシコの銅メダルマッチが(埼玉スタジアム)2時間前倒しになる「飛び火」もした。
テニスも選手サイドの要望で、また札幌で行われ女子マラソンもスタート前夜、24時間を切って突如、スタートが午前7時に1時間繰り上がるなど混乱もあった。
 こうした変更は原則、IFが検討、運営サイドと決定するもので、この決定が放送枠にとって影響があるかどうか、IOC(国際オリンピック委員会)との議論、調整が行われる。サッカーでは女子の変更のために、「メダルマッチを同時中継しない」という放送上のルールにかかり、
男子の3位決定戦を女子決勝までに終わらせる措置が取られた。水面下の検討は別に、どの変更例も「突如」といった感が否めない。
 東京五輪組織委員会はこうした変更プロセスについて、五輪後にIOCに対しても改善策を要望する提案をすでに出している。会見でも「要請があればギリギリまで柔軟に考えていくが、選手にとってはなるべく早く変更を知らせたほうがよい」(中村チーフ)と、IPC(国際パラリンピック委員会)と、変更のプロセスの段階から情報をオープンにする改善策を検討するとした。
 
 組織委員会は、海外から来日した選手
1人など新たに15人が新型コロナウイルスに感染したと発表。組織委員会が12日から発表しているパラリンピックに関連した感染者の数は101人となった。加えて20日の検査で陽性反応を示した選手1人の濃厚接触者に、9人が認定されたことを明らかにした。9人には隔離措置が取られ、毎日の検査や感染対策で今後、練習や出場を判断する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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