スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年7月31日 (土)

バドミントン混合ダブルス銅メダルの渡辺・東野ペア 会見「10年分の思いを込めて抱きしめた」東野「福島に少しでも恩返しできたら」渡辺

31日=都内 東京五輪バドミントン混合ダブルスで銅メダルを獲得した渡辺勇大(24)、東野有紗(24)(ともに日本ユニシス)のペアが、メダリストによる一夜明け会見に臨んだ。ともにバドミントンの強豪、福島の富岡第一中学に進学して出会う。11年には、卒業式を終えた直後、東日本大震災で避難生活も経験しただけに「福島で過ごした6年間があったからここまで来られた。変わらず応援して下さった皆さんに、少しでも恩返しができたなら嬉しい」と渡辺は言う。
学年が1つ上で中3だった東野を「東野先輩」と呼ぶ渡辺と、「ゆうたくん」と呼ぶ東野のコンビはそうした困難とともに中学時代にスタート。東野は初めて一緒にコートに立った日の感慨を、会見で「あの時、まだ話してもいなかったのに組んだ瞬間、息が合った。今も忘れられない」と、左に座った渡辺に向かって感謝し、小さく頭を下げた。卒業などで一度は「解散」したが、お互い、「ミックスで世界一になれる」と共通の思いで東京を目指した。
試合中も「2人で楽しもうと言っていたが、実際にはそんな余裕もなかった。でも心が折れそうなとき、先輩がコートで大丈夫だよ、ドンマイと声をかけてくれた」と、渡辺も感謝を伝える。女性がひとつ上で先輩、男性を「くん」と呼びながら、常に全幅の信頼を表現する。2人が共調しながら見せてくれる自然な「仕事ぶり」は、新たなスタイルのひとつとしても反響を呼びそうだ。
メダルが決まった瞬間、2人で思いきり抱き合ったシーンについて聞かれると、「ゆうたくん、とだからここまで来られた。この10年間の思いを込めて抱きしめました」(東野)と、2人で笑顔を見せた。パリ五輪で、金メダルを狙いたい、と明言した。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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