スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年7月22日 (木)

「行こうよ、行こうよ、と声を掛け合って粘った」起死回生のゴールを決めた岩渕 歴代1位となる5試合連続ゴール  

2大会ぶりに復帰したオリンピックの舞台は、なでしこを優しく迎えてくれるわけではなかった。序盤6分で早くも失点。GKが山下から池田に代わった起用が影響していたのか、していなかったのか、カナダのエース・シンクレアにシュートと跳ね返り2度も連続して打たれるなど、DFラインにほころびが生まれる。一気に波に乗るカナダに、序盤15分までポゼッション(ボール保持)でも68%と圧倒されてしまった。「面食らってしまった」と、カナダが一気加勢にきた時間帯を岩渕は振り返る。後半、流れを変えようと高倉監督はFW田中を投入。狙い通り、田中はタイミングよく前線に飛び出しGKと1対1に。GKのファールで田中がPKを獲得した。岩渕が蹴るのでは?とも思えたが、岩渕は「ストライカーの気持ちはよく分かっている。自分で取ったPKだから(田中に)蹴れば?、思い切ってね」と声をかけたという。絶好の同点機を外してしたが、「(メディアに)ミスと言わないでポジティブにお願いします」と、気を使った。 
 しかし試合はPKで同点に追いつなかったために苦しい時間帯が続く。そうした中、岩渕、熊谷と、ロンドンを知る2人の経験値がチームの流れを少しずつ変えた。「(前へ)行くしかない、行こうよ、行こうよ!、と紗希は声をかけて盛り上げてくれた。(ゴールシーンは)無観客だからベンチのパワーもいつもより感じられたし、みんなの気持ちが乗ったゴールだと思う」と、苦しく、難しかった初戦を何とか引き分け、チーム一丸を強調した。これで、澤穂希さん、高倉監督を超える5試合連続ゴールで単独トップに。今大会前、10番を岩渕に託すとした高倉監督は「しっかり、エースの仕事をしてくれた」と称える。試合については、序盤、立ち上がり、「ずっと気を付けてね、と言っているが、身体に強い外国選手がス戦にきょうの課題を活かしてしっかり準備したい」と反省。9年ぶりに戻った五輪のブランクはこれで少しは埋まったはずだ。英国との大一番は、24日、再び札幌ドームで行われる。番は、24日、再び札幌ドームで行われる。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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