スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年7月 8日 (木)

元日本代表MF中村憲剛氏が今秋開幕のWEリーグで講演「結果が全て。ピッチと私生活の重要度は10対10」とプロ選手としての心構え説く

 8日=オンライン(Text by SH) 女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」(Woman Enpowementの略)の9月開幕を前に、選手たちは7日から3日間の日程で研修を行っている。これまでもプロ契約で昨季までのなでしこリーグに参加していた選手もいたが、心構えや振る舞い方など真の「プロ選手」としてどう表現していくべきかを学ぶ機会として、多岐にわたる講師を招いて講義を受けている。
 この日は、昨季限りで現役生活に別れを告げた元日本代表MF中村憲剛氏(40=現川崎フロンターレリレーションズオーガナイザー)を招聘。「プロフェッショナルとは」という題目で、WEリーガーからの質問をもとに現役時代に心掛けていたことやプロ選手としてのあり方を語ってもらった。
 幼少期に元なでしこジャパンの澤穂希さんと同じチーム(府ロクサッカー少年団)でプレーしていた経験もあり、現役時代から女子サッカーへの理解が深かった中村氏はWEリーグへの期待も高い。その中で、最も強調していたのは「プロは結果がすべて」ということ。プロ選手としてお客様からお金をいただいてプレーする以上、見に来てくれた方にもう一度足を運んでもらうため、最高のパフォーマンスを見せなければならない。ここで言う「結果」は勝ち負けだけではない。
 途中、選手からの質問で「プロとして、ピッチ内と私生活の重要度の割合は何対何でしたか」と聞かれると「10対10」と即答。「どちらも重要。まずピッチで結果を出さないと、ピッチ外の活動でも頑張れない。逆に、僕はピッチ外でさまざまなイベントに参加させてもらってフロンターレのサポーターから励まされた。それでピッチでも頑張れた。サポーターは僕にとって同志みたいなものだから」と支援してくれるすべての関係者、サポーターへの感謝の心を持つことの意味を説いた。
 中村氏自身、プロ入りして15年間タイトルとは無縁だった。「イベントとかに力を入れすぎだから優勝できないんだ」という声があったことも明かした。だが「サポーターに応援されなくて何がプロ選手だ」との思いを忘れたことはなく、これが初タイトルとなった2017年のJ1初優勝の原動力となった。小学5年生の愛娘がGKとしてプレーしているとあって、最後は〝父親目線〟でWEリーグにエールを送った。「あとはこれからみんなで新リーグを作っていけばいいと思う。サッカー少女たちの目指すべき場所となれるか、皆さんの頑張りにかかっている」。中村氏の熱い講義に耳を傾けたWEリーガーたちにとっても充実した時間になった。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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