スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年6月 6日 (日)

体操種目別選手権 五輪代表個人1枠は米倉英信の大激戦を僅差で制し内村が4大会連続出場「(この演技では)ポイントで競っていた米倉に申し訳ない」

6日=高崎アリーナ 東京五輪選考会を兼ねた体操の全日本種目別選手権決勝が行われ、鉄棒1種目で東京五輪を狙ってきた内村航平(32=ジョイカル)は、ミスがあったものの、H難度のブレトシュナイダーを含めて、カッシーナ、コールマンなど全ての離れ技を決めて15.100点をマークしこの種目で2位となり、体操史上2人目となる4大会連続出場を決めた。
個人1枠の五輪切符をめぐる争いは大激戦となり、内村より先に演技した跳馬のスペシャリストで、五輪を狙う「ヨネクラ」の持ち主、米倉英信(徳洲会)は、2本ともに着地がわずかに動いて日本体操協会が独自に設定した選考ポイントで上限の40に届かず、30点にとどまった。最終演技者の内村は、着地は止めたものの、15・100。これで2人の選考ポイントは170ポイントと並んだ。タイブレーク規定で、内村が僅差を制した。リオ五輪後の体操初のプロ転向、たび重なるケガ、オールラウンダーからスペシャリストへの大転換、と様々な挑戦を経て自国開催の五輪にたどりついた。
また男子団体の残る2人は、谷川航(セントラルスポーツ)、全日本で両肘を負傷し、一時は選考会出場も危ぶまれた北園丈琉(徳洲会体操クラブ、清風学園)に。NHK杯で決定した橋岡大輝、萱和磨とメンバー4人全員が初出場となった。
内村は場内インタビューで「えー、ダメです」と切り出し、「ポイントで競っていた米倉選手にすごく申し訳ない。全然納得いっていないし、これではオリンピックにはいけないな、と着地した時には思っていたので、(決まったと知り)これで五輪に行っていいんだろうか、と、米倉に、本当に申し訳ない、と言いました。(佐藤コーチ)彼がいなかったら、ここにいなかった。彼がいなかったら鉄棒はできていなかった。きょうの鉄棒では、レジェンドやキングとはいえない。橋本大輝、北園丈流らニュージェネレーションの後に、大長老がやって非常にやりにくかったです。演技以外にも役割はあるのかな、と思っている」と、喜怒哀楽を交えて出場を表現した。

初代表喜びのコメント
谷川航 
初めての(五輪出場の)うれしさとホッとしたというのがありました。(3大会の予選を通して)ミスをしない、というのがとても大事だと思った。ミスしなければ、五輪でも団体金、個人でもメダルが狙える。初めての代表選考だったので、緊張感が高かった。その中で演技できたのは、成長したこと。みんなオリンピックは初めてで、大輝は世界選手権1回、丈琉(北園)も世界大会初めて。自分が背中で、演技で、経験を語れるようにしたい。

北園丈琉 絶対に金メダルを獲らないといけないとい使命感が沸いてきた
。全種目でベストパフォーマンスができた。(4月の全日本の)予選は1位、鉄棒であぁいうこと(落下で両肘負傷)があって、本当に感謝しかない。これからしっかりチームを作っていきたい。(内村に代表に決まった後)「本当に良かったなぁ」と言ってもらった。内村さんと一緒にオリンピックに行くのは、夢だった。チーム最年少なので、勢いをチームにつけて優勝したい。


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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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