スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年6月30日 (水)

東京五輪・パラリンピック サッカー界が初めて日本代表、なでしこに加え、ブラインドサッカーと同一ユニホーム着用「サッカーで日本をひとつに」

30日=オンライン 日本サッカー協会(JFA)は、Jリーグ、女子プロリーグ「WEリーグ」、JIFF(日本障がい者サッカー連盟)、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)と共に東京五輪に向けて「TEAM FOOTBALL JAPAN 2020」―サッカーで日本をひとつに、を結成すると発表した。東京五輪には男子U―24(五輪)代表、女子代表なでしこジャパン、パラリンピックには5人制サッカー=ブラインドサッカー代表が出場し、本番では3チームが同じアディダス社のユニホームを初めて共通で着用する。男・女、障害の有無を超える機運を高める取り組みで、JIFFの北沢豪会長は会見で「日本代表として同じユニホームを着て試合できるのは長年の夢であり、こうして実現でき感激している」と、すでに6年の会長活動でひとつの目標をクリアした喜びを表現。日本ブラインドサッカー協会の塩嶋史郎理事長も「思いを一つに、ワンチームで臨めるのは大変うれしく思う。選手たちのモチベーションにもつながる」と話した。
 2015年、それまで個々に障がい者サッカーの団体で活動していた7団体(ブラインドサッカー、ろう者=聴覚障害サッカー、アンプティサッカー=切断障害、CP=脳性麻痺サッカー、ソーシャルフットボール=精神障害、知的障害者、電動車いすサッカー)を、法人格のもと日本障がい者サッカー連盟として取りまとめた。法人化により、これまでは人的な交流などしかできなかった日本協会は、グラスルーツ推進部が中心となった本格的な支援が可能に。その延長戦上に、FA(イングランドサッカー協会)が世界でもいち早く行ってきた、障がい者サッカーの各団体とイングランド代表が同じユニホームで活動している理想的な共存を目指し、ここまでこぎつけた。JFA田嶋幸三会長は「(FAの活動を)非常に素晴らしいことだと見ていた。まさに歴史的なことだと思う」と喜んだ。
 JBFAはすでに29日、東京パラリンピック日本代表候補選手として推薦選手10名を発表。キャプテンの川村怜はこの日VTR出演で「ずっと憧れてきた日本代表と同じユニフォームを着て、今回戦うことができて非常に嬉しいですし、誇りに思います。金メダルを目指して、日本の勝利を届けられるように、全力を尽くしてがんばります」と強い思いを示した。吉田麻也、熊谷紗希もVTRで「ひとつのチーム」として戦える喜びを口にする。
 Jリーグの村井満チェアマンも会見に出席し、コロナ禍で様々な困難がある今の時期にこそ、こうした取り組みに価値があるとしたうえで、「サッカーで日本をひとつに、というスローガンもそうだが、先ずはサッカーが(多様性を受け入れて)ひとつに、ということだと思う。今後全国40都道府県57のクラブそれぞれでこうした活動が広がると期待している」とした。    今後も「ひとつのチーム」として同一ユニホームを着用できるよう、「契約に盛り込みたい」と田嶋会長は将来の展望を明かす。ただ、様々なスポンサーが、日本協会と障害者サッカー協会のスポンサーとして協力し、それがバッティングするなど、本当の「ひとつに」を将来的にも継続的に実現するためには、今後整備すべき課題は残っている。 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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