スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年4月18日 (日)

内村航平 鉄棒H難度のブレトシュナイダーを決め15.466と4度目の五輪出場へ好発進「鉄棒の声が聞こえる感覚がある」新境地をユニークに表現

18日=高崎アリーナ 東京五輪代表選考会を兼ねた体操の全日本個人総合選手権男子決勝が行われ、鉄棒のみに絞って08年北京五輪以来4大会連続の五輪出場を狙う内村航平(32=ジョイカル)が、H難度のブレトシュナイダー(コバチ2回ひねり)を含め、すべてのはなれ技を成功させて15・466点をマーク。15・166点をマークした16日の予選に続き、日本協会が作成した暫定の世界ランキング得点の1位得点(14・933点)を0・2点上回り、選考会で付与される最高の40ポイント獲得が可能に。個人総合での五輪2連覇の偉業に続き、日本男子体操史上では2人目となる4回目の五輪出場へ前進した。代表入りには、今大会の予選(16日)、決勝(18日)、5月に行われるNHK杯、6月の全日本種目別の予選、決勝の5演技で日本協会が作成するランキング得点を揃えなければならなかったが、内村はまず序盤の2演技で好調な滑り出しを見せた。
 内村は、「かなり体力的にしんどかったが、演技構成自体がすごく自分の体に染みこんできた。何も考えずにできた感じです」と手応えを口にしながら、一方「100満点中60点かな。(鉄棒を)見て掴みにいっている感じがよくない」と厳しい自己採点も。五輪に向けては、自分の演技で「いっぱいいっぱいな感じ。その辺については楽に考えている」と言う。「楽に考えている」が決して「楽」なわけではない。過去3大会、個人総合、団体で臨んだ五輪とは異なり、年齢を重ねてオールラウンダーからスペシャリストに挑戦する難しさと同時に、もはや大会やメダルのだめだけではなく、自分を納得させるために体操究める途中を楽しんでいるかのようだ。
 体力は日に日に落ちていると実感するそうだが、一方、日に日に体操との距離は変わっているようだ。簡単に表現できるものではないはずだが、内村は演技後「鉄棒の声が聞こえるような気がする」と、器具の不具合や調整を音で確認していた以前とは次元の異なる感覚を、最近得ていると明かした。道具と、自分と、鉄棒が対面するような「ちょっとスピリ
チュアルな話になっちゃうんですが・・・以前はそういうことはなかった」と笑顔を見せる。種目別に絞って得た、こうした表現、それを口にできる余裕も、メダルや技とは違うが「前人未到」と呼べる境地なのだろう。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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