スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年3月29日 (月)

U-24日本代表 初戦から選手9人を入れ替えアルゼンチンに3-0と完勝 林、板倉2点「良い波に乗って自信を持ちつつも慢心せずに」2アシストの久保も手応え

29日=北九州スタジアム 今夏の東京五輪を目指すU-24日本代表が、南米王者として五輪に臨むU-24アルゼンチン代表と、国際親善試合2試合目を戦い3-0で勝利した。3日前に行われた1戦目では、1-0と完封で敗れ、MF久保建英と、この日ボランチに起用された板倉滉の2人をのぞきスタメン9人を大幅に入れ替えて反撃を狙った。立ち上がりから、1試合目以上に球際での強いプレー、高い位置からアグレッシブにボールを追うプレッシングで主導権を掴み、両サイドの相馬勇紀、食野亮太郎、久保のスルーパスなどからアルゼンチンDFを振った。コンビを組んだ田中碧、板倉のダブルボランチを中心に、CBと連携する固い守りでアルゼンチンの攻撃を阻んだ。前半終了間際の44分、瀬古歩夢のロングフィードに、FW林大地が飛び出し、GKとの1対1と絶好の位置に。林はこれをゴール右に決めて日本が先制。ハーフタイム間際のゴールは、疲労の見始めていたアルゼンチンにとって1点以上に、気勢を削ぐ効果的な1点でもあった。
 後半に入り、アルゼンチンも反撃を試みようと、パスのテンポをあげるが、前半同様、日本が主導権を保持。23分、左CKのチャンスにキッカーは久保。「何となく(板倉を)狙った」という好クロスに板倉が頭で合わせ2点目。さらに5分後の28分にも、再びCKに。23分同様、久保が蹴る。これにも板倉が勢いでアルゼンチンDFを突破するようなヘディングで3点目を奪った。 「2本目は(板倉を)特に狙っていなかった。たぶん板倉選手もこれから2点取ることはないと思いますので、しっかりと喜びを噛みしめてほしいです」 と、久保は試合後、ユーモアたっぷりに話していた。
 初戦から中2日で、日本は3-0でアルゼンチンに完勝。しばらく代表の活動は行われないが、横内監督は「クラブに帰って、それぞれがレベルアップし、レベルアップした姿でまたチームを高めていこう」と、ロッカールームで選手たちに声をかけたという。本番でも1次リーグを戦う上で、初戦を落とす、2試合目を落とすなど突破に向けて「1敗」の後、を想定する必要がある。アルゼンチンに勝利した経験は自信につながり、加えて、26日からの短時間での修正力、対応力を勝利に変らた価値ある1勝となった。4月21日に五輪の1次リーグ抽選会が行われる。

・アルゼンチン代表フェルナンド・バティスタ監督 アルゼンチンはボールを保持できず日本がキープをしていた。また日本がインテンシティの高い、アグレッシブなサッカーを長所とするのはよく分かっており(2試合目で急に変わったのではない、とのこと)1試合目では彼らの長所を消せたが、きょうは、前半の最後に点が入ってしまい、選手の気持ちがそがれた面はあったかもしれない。この2試合でパフォーマンスを見ることができ、様々な結論を導きだすことができる。今回の移動は72時間かけた選手もいるが、それは日常茶飯事。五輪にむけ、より競争力の強いチームを作り、いい準備を進めたい。

・日本代表 横内昭展監督 前半後半での戦術面に大きな変更はなかったが、後半、アルゼンチンはもっと前に出てくるかな、と思ってはいた。1戦目は、アルゼンチンが日本の足元でのプレーを狙って、かなりボールへのプレッシャーを受けたが、きょうは最後までよく走っていたのが勝利につながった。攻守ともコンパクトにやってくれて、1点目は歩から持ち出してコンパクトにして大地にパスがつながった。前節から9人メンバーをかえたのは、2戦を含めてシミュレーションするのが目的だったからだ。林は今回初めてだったが、自分の持ち味を存分に出し、田中は1試合しか出場できなかったが自分なりにアルゼンチンや試合を分析して試合に臨んでくれた。デュエルで勝って、強度を長く維持しようと選手が頑張った結果だ。勝てたことで多少の自信は生まれたと思うが過信にならないように、まだまだ成長できると思う。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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