スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年3月30日 (火)

サッカー日本代表「新たに掘り当てた水脈のエネルギー」コロナ禍、2つの代表の活動の困難で発見・発掘した国内ベテラン組の力

今回、3月の最終週に五輪代表と日本代表が、国内で2試合ずつ行うという過去例のない集中的な代表活動は、厳格な新型コロナウイルス対策をベースにした上で、海外組の招集のために吉田麻也、守田英正がチャーター便で空港検疫をタイムリミットぎりぎりで通過させ、また代表の斉藤俊英コーチが集合日にコロナウイルス陽性の検査結果を受けて隔離される(結果的には、その後の検査全て陰性となり偽陽性と判明)など、様々な「難問」が立ちはだかる中で行われた。この日、森保一監督は試合後、対応に苦慮したこの10日間を終え安堵したのか、「正直
もう3月の活動は無理なんじゃないか、と思うほど大変だった」と、会見で漏らした。
 国内では1年4か月ぶりの代表活動再開は、こうした難問と、五輪と代表のコンセプト「ワンチーム2カテゴリー」の編成の難しさをも抱えた。しかし、この困難が、「国内組のベテランたち」という新たな発見につながり、これまで発掘されなかった新しい水脈が、コロナ禍と代表チームの活動に循環をもたらし、推進力を与えてくれたのかもしれない。
 代表初招集が8人。W杯予選は、たとえ相手とのランキングの差があったとしても、従来の試合とは全く異なる厳しさ、緊張感を強いられると選手は誰もが口にする。そうした状況下で、この日、横浜M・松原健は28歳で代表デビューした。後半19分には、追加招集されたMF稲垣洋も代表デビューをし、いきなり2得点の大活躍を見せた。韓国との親善試合では、山根視来(川崎)が27歳で代表デビュー、初ゴールを決めた。歴代全ての記録は細かく確認していないが、2試合で代表デビューをした選手が27歳、29歳と、デビュー最年長ゴールをあげているはずだ。
 コロナ禍で酒井宏樹(マルセイユ)はクラブからの代表招集外に。もしいつものように招集が進めば、山根の招集はなかったかもしれない。熾烈な右サイドポジションには、室屋成もいる。コロナ禍でこれだけの強行スケジュールを組んでいなければ、日本代表のW杯予選に初登場するような27,28、29歳は呼ばれていなかっただろう。
 また、「海外組」「国内組」に、「若手」と「ベテラン」を加えると、固定されたグループ分けができてしまい、本来ならば、キャリアや年齢など関係ない日本代表に、「ベテラン組が経験のない選手にアドバイス」といった平凡な構造ができあがってしまっていた。出場が100試合でも恐れがあり、1試合でも怖がるものは何もない。そんな場所だろう。
 出場今回、Jリーグでコンスタントに結果を出している選手たち、いわば「国内のキャリア組」が加えた新たな色は、海外組にも、五輪組にも、海外クラブでの経験とは違う刺激をも足したように見える。この日2得点の稲垣は会見で「あまり国内組、海外組、という分け方は好きじゃない。確かに海外組への遠慮の部分はあったが、少しずつ自然体に話せるようになり、きょうは誰が出てもいい準備ができていた。今回選ばれた選手たちはJリーグでストロングポイントを持って入ってきたことをしっかりアピールできたと思う。そして今回の活動が、普段やっている試合につながると思う」と、笑顔を見せた。
 森保監督も言う。
「これまで(の予選は)海外組を中心に臨みましたが、今回、Jリーグで活躍してくれる新たな選手たちとの融合ができた。同じコンセプトのもとで、プレーする選手が増え、海外組との新しい融合をチームに彼らが持ち帰ってくれれば、彼らを通して、またJリーグで成長してくれる選手が増えると思う。発見発掘につながった」と、大きな手応えを「発掘」と表現した。
 Jリーグで安定した力を発揮するベテラン、輝きを持った選手たちにもチャンスが十分あり、若手、ベテランの横糸に、新しく加わった中堅の糸は、日本代表に魅力的な模様を描いて欲しい。代表は6月に再開する。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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