スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年3月 2日 (火)

東京五輪組織委員会理事会女性比率一気に42%へ 3日評議会で正式決定 副会長には荒木田裕子氏就任

2日=都内 東京五輪・パラリンピック組織委員会理事会が行われ、橋本聖子新会長(56)が就任時に明かした、理事会における女性比率を40%に引き上げる案が全会一致でまとまり、理事会の承認、任命を行う3日の評議会で正式決定する運びとなった。理事会後の会見で武藤敏郎事務総長は、現在「3名以上35名以内」と定款で定められている理事定員数を、定款を変更して「3名以上45名以内」に変更したと説明。理事の一人でJOC(日本オリンピック委員会)専務理事の福井烈氏(日本テニス協会専務理事)が、山下泰裕JOC会長、田嶋幸三同副会長、福井氏3名が、JOC選出理事で、「男性3人は新理事会に対してのバランスを欠いている」と、山下氏の意向を受けた理由で理事を辞退。また五輪相に就任した丸川氏も抜けており、現在33名の理事に女性12名を増やして45名(女性19名)で、女性比率も42%となる見込み。女性アスリート、ジェンダーに関する有識者を入れた12名の人選は評議会を経て発表される。理事は原則無報酬。
また副会長は、多様性を尊重、推進する担当副会長として、女子バレーのモントリオール五輪金メダリスト・荒木田裕子氏(67)を加え7人体制となる。
武藤氏は、「私たちが議論のテーマとしているのはあくまでもスポーツ界の話」と、組織委員会の立ち位置は明確にした上で、「スポーツには社会を変える力がある、というのが私たちの基本コンセプト。組織委員会からの発信によって、アスリートはもちろん、スポーツ団体、スポンサー企業の皆さん、地方のスポーツ団体も呼応して(社会にも)何かムーブメントになればと思う。(女性が増えたという比率より)何を発信するのかが中身が重要で、成果物はこれから検討する」と話した。
文科省、スポーツ庁がスポーツ団体に求める運営の規範(ガバナンスコード)として、理事会での女性比率40%の目標が掲げられている。
2月3日、森喜朗・組織委員会前会長が「女性が多く入っている会議は時間がかかる」と発言したのは、各団体がこの指標に到達できない現状について、JOC臨時評議会後のあいさつに盛り込んだもの。その差別発言の責任を取って辞任した森会長の後任として、橋本会長は就任会見で「女性理事の比率を40%に」と公約を掲げており、就任からわずか12日目にこれを実現させる徹底したスピード感、イメージを一新しようとするリーダーシップは見せた。
一方、組織委員会で理事会が開催されるのは、五輪が開催されるとしてもあと多くて3回程度。女性理事の増加だけが歓迎されるわけでは決してない。東京五輪の開催可否、感染対策、聖火リレーの実施、ボランティアを含めた辞退者の増加にどう取り組むかなど、実務が極めて重要なタイミングだ。女性理事が19名に増加した点を組織として強みにできるか、40%の看板で終わるか、女性理事たちの発言や行動力が一層シビアに評価される。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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