全国859自治体を121日かけ、1万人の力で「希望の道を、つなぐ」聖火リレースタート「涙が出た」組織委員会橋本会長
25日=福島県Jヴィレッジ 東京オリンピックの聖火リレーが、11年サッカー女子W杯優勝を果たした「なでしこジャパン」のメンバー16人と、佐々木則夫監督(62)によってJヴィレッジからスタートした。7月23日、国立競技場での開会式まで121日間、47都道府県859自治体を約1万人のランナーの力でつなぐ4カ月の長い旅が始まる。新型コロナウイルスの感染拡大により、出発式典は一般客を入れずに実施された。今後、沿道でも「密」にならないよう再三の呼び掛けを徹底して行い、日々、組織委員会の「事態対応チーム」が、危険のあった場合は中止を判断するなど感染予防との並走となる。
なでしこジャパンの後は、楢葉町、広野町、川内村、いわき市、富岡町、葛尾村、双葉町、大熊町、浪江町、と、25日は、東日本大震災で全市民が避難を強いられた大熊、双葉町ほか10市町村11区間をめぐり南相馬市にゴールする。式典に出席した内堀雅雄福島県知事は「聖火は福島の59市町村のうち20を走る。大熊、双葉も復興はまだまだだが、10年という節目に、またここから頑張って行こう、と県民が心を一つにする機会だととらえている」とあいさつし、原発事故中には対応の最前線となったJヴィレッジからの式典に臨んだ。
聖火は昨年3月、ギリシャのオリンピアで採火され20日に日本に到着したが、史上初の五輪延期はその後に決定。このため組織委員会は、聖火と種火2つを場所未公表のまま厳重に管理し続けてきた。今年まで全国で行われた聖火展示会には7万人が足を運んでいる。
スタートに先立つイベントでは、オープニングに福島県の国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」(出演者12名)、会津田島太鼓保存会「白鼓」(びゃっこ)による16名での太鼓演奏、スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチーム「フラガール」のフラダンス(11名)、福島県立福島西高校デザイン科学科の作品披露(10名)、震災と福島第一原子力発電所事故でメンバーが各地に避難し活動を一時停止した南相馬市のマーチングバンド「シーズプラス」の演奏(27名)、全国合唱コンクールで金賞を受賞するなど合唱が盛んな郡山市の郡山第5中(14名)と朝日が丘小学校(11名)が合同で美しい声の「花は咲く」をうたい上げた。
組織委員会橋本聖子会長は式典後に「聖火がトーチに灯された瞬間、涙が出た。本当にうれしい」とコメントしながらも声を詰まらせていた。
各地で感染のリバウンドの兆候が見られ、特殊な状況下でスタートは切ったもののコロナ対策は重い課題となる。各種世論調査では7割以上が今夏の五輪開催を歓迎していないなか、組織委員会が繰り返している「安心安全のオリンピック」の形を国民にどう示し、機運を高められるが焦点となる。聖火のアンバサダーを務める柔道の五輪3連覇、野村忠宏氏は、憧れで偉大な目標でもあったバルセロナ五輪金メダリストの古賀稔彦氏の死去を改めて悼み「スポーツの力、を信じたい」と、素材の一部に東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築の廃材が再利用された桜ゴールドのトーチに願いを込めて、なでしこジャパンの岩清水梓に手渡していた。
聖火リレーのスローガンは「希望の道を、つなごう」。