スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年3月12日 (金)

中国がIOCに東京と北京大会へのワクチン提供を申し出 「組織委員会としてコメントできない」武藤事務総長 

11日=都内 IOC(国際オリンピック委員会)総会はオンラインで2日目の会合が行われ、橋本聖子会長が会長就任後初めてプレゼンテーションに臨み、その後取材に応じた。総会では、4年任期の再選を果たしたトーマス・バッハ会長が、今夏の東京五輪と来年21年冬季北京大会について、中国オリンピック委員会から中国製ワクチンの提供の申し出があったと明らかした。定例総会は、10日から3日間で、2日目の11日は東京大会など今後開催されるオリンピックの組織委員会が、準備状況を報告した。バッハ会長は、東京大会と北京大会の選手や関係者に対して中国製のワクチンを用意し、希望する選手、関係者が接種した場合は「IOCが費用の負担を行う」と話し、参加者が2回接種できるだけのワクチンを確保できるとした。これについて、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は、「ワクチン接種は政府がやっている。組織委としてコメントする立場にはない」とし、中国の申し出は、IOC総会でバッハ会長が公表するまで「(事前に)聞いていなかった」と明かした。また「(東京大会は)ワクチンがない場合でも対策を講じて開催するという観点で準備してきた」と、ワクチンの有無は開催の要件にはなっていない点を改めて強調した。
 受け入れを断念したと国内で報じられている海外観客について橋本会長は「海外の観客を受け入れないと決まったかのような報道が出ているが、まだ決定していない。組織委員会の中で医学的、科学的な見地から専門家の話を伺い、事務方がまとめて、聖火リレーのスタート前に(25日)5者会談(IOC、IPC=国際パラリンピック委員会、東京組織委員会、東京都、政府)にはかる」と、慎重な姿勢を示す。
 海外からの観客の受け入れを全面的に断念した場合について、この日、IOC・コーツ調整委員長も、1年延期で困難な状態にあるチケットの払い戻しや宿泊、旅行代理店の予約の扱いとキャンセルなどに一層複雑な事務作業や課題が残るとしたうえで、「こうしたことについて迅速に話し合いを行い、来週までには皆さんにお伝えできるようにしたい」と結論を急ぐべきと強調。五輪という枠組みの中ではあるが、開発、接種を進める中国が「ワクチン」を切り札にIOCに提案したのは、ワクチン接種が世界的にも遅れ、海外からの観客を受け入れない方針と伝えられている日本政府への政治的なメッセージであり、中国は北京五輪を通常に近い形で開催するといった国際的なアピールとも取れる。
 組織委員会では医学、科学的に情報を収集し事務方でまとめたうえで来週にも予定される5者会談にはかる。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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