スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年2月 4日 (木)

女性蔑視発言とも取れる発言 森会長が会見で「不適切な発言。深く反省し撤回してお詫びする」と謝罪

4日=東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(都内) 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が4日午後、都内で取材に応じ、3日、JOC(日本オリンピック委員会)の臨時評議会で「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」と発言した件について、「オリンピック、パラリンピックの精神に反する不適切な発言だった。深く反省している。発言を撤回し、不愉快な思いをされた皆さんにお詫びします」と、謝罪した。加えて「辞任するという考えはない」と、会長を続ける考えを示した。
3日に行われたJOC臨時評議員会に名誉委員として出席。最後の挨拶のなかで、JOCが、各競技団体ともスポーツ庁の定めた「スポーツ団体ガバナンス(組織統治)コード」にのっとり、今年6月の役員改選で女性理事40%以上とする目標値に対して、私見を明かしたもの。女性理事を増やす方針をJOCも掲げている点に関連し「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」と発言。自身がかつて会長を務めた日本ラグビー協会で議事進行に時間がかかった経験からか、「(女性理事は)競争意識が強く、誰か1人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。みんな発言される」などと、女性を蔑視するような話を引き合いに出した。
政治なら、謝罪して撤回はよく使われる戦法だろう。しかしここではそれでは落着しないのではないか。
発言は、新型コロナ感染症の対策で揺れる五輪開催にも、最悪の形で打撃を与えてしまっているからだ。各国のメディアで「女性の会議への参加を制限するもの」(米・ニューヨークタイムス)、フランスのAFP通信も「東京五輪組織委員会会長が性差別発言」との見出しで報じており、ジェンダー格差がそもそも大きいとされる日本に(世界経済フォーラム19年調査で日本は121位)、世界はシビアだ。オリンピックは、女性に限らず、ダイバーシティの観点でも大きな影響力を持ち、スポーツ界は、五輪開催でジェンダー問題にも改善のはずみを、とも願っている。その流れをリードするはずの人物の考えに、大きな失望と落胆が広がっている。IOC(国際オリンピック委員会)は、男女平等を憲章でもうたっており、今後、森氏が説明をする可能性もある。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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