スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2021年1月29日 (金)

東京五輪組織委員会・森会長バッハIOC会長と電話会談「(開催に)反対意見はなかったと聞いた。無観客も想定している」 「(開催は)米国次第、IOCにリーダーシップはない」と米紙に発言の高橋理事は再び釈明と謝罪

 28日=東京・中央区 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長と電話会議を行い、その後取材に応じた。電話会談は1時間以上に及んだようで、バッハ会長がこの1週間行ったNOC(各国オリンピック委員会)やIF(各競技団体)との会合、IOC理事会、またアスリート委員会からの声などを会長から組織委に報告。森会長によると、「みんなが早く東京に行きたいという声が多かった」、「東京について(中止かなど)の反対意見も出ていない」と、バッハ会長は会議の内容を伝えたという。
 森会長は、五輪期間中の観客、また海外からの観客受け入れについて「流れをもう少し見ないといけない。いろんなシミュレーションして、みんなでやっている。今の時点でいちいち申し上げて、一人歩きしてはいけない。今は何も言う必要がないし口が裂けても申し上げられない。何もやってないのか、と言われれば、用意周到やっている。みんながいろんな形を考え(無観客についても)全て含めて想定している。基本的には無観客にはしたくはないが、それも考えておかないとシミュレーションにならないんじゃないですか」と、無観客を選択肢に入れているとした。観客数の上限や外国からの観客の扱いは、今春までに決めるとした。

 世論調査でも「安全で安心な大会」への支持が得られていない点について「安全の判断の基準は?」と質問されると、「皆さんが記事を書くのと同じように、判断基準などはない。みんなが安全、安心を願ってやっている」とだけ話した。
 武藤敏郎事務総長も、川崎でワクチン接種のテストを公開し問題点を洗い出し、ワクチンを受ける市民に分かり易くしようとしたように「(分かり易く見せるためにも)五輪の入国からのシミュレーションを皆さんに見せるなどの機会は検討していないか」との問いに、「(昨年12月に発表された)中間整理案には全て書いてあります。各部門でしっかりやっている」と答えた。一般的には読まれにくい「報告書」を引き合いに出すなど、緊急事態宣言下、五輪をイメージする難しさ、不支持の背景、不安を抱える選手、関係者に対して、もう少し丁寧な発信で情報を届ける必要性をうかがわせた。

 森会長、バッハ会長と小池百合子都知事、橋本聖子五輪相らを含むトップ会談を2月に実施する点で合意し「互いにこれまでやってきたことを確認して整理し、次のステップに進む」(森会長)と、続けて3月上旬にはIOCのコーツ調整委員長が率いる会合が開かれる。
 また理事の高橋治之氏が「米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)」に「もし大統領が五輪開催に向けて前向きな発言をすれば、強い勢いを得ることができる」と、(開催は)米国次第だ、とし、「IOCはリーダーシップを持っていない」と加えた発言について、森会長に高橋氏から発言の真意についての釈明があったという。 同氏は昨年3月にも、同じ米紙の取材に対して「1,2年の延期が現実的だ」と話し、「一般論を言った。口が滑って申しわけない」と、森会長に釈明と謝罪をしている。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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