異例尽くしの大阪国際女子マラソン 一山麻緒が2時間21分10秒で優勝 日本記録更新はならずも一山大会新、前田穂南も自己新で力示す
31日=大阪・長居(気温10・2度、湿度50%) 東京オリンピック女子マラソン代表の前田穂南(天満屋)と、一山麻緒(ワコール)が出場し、コロナ禍で異例の周回15周で日本記録(2時間19分12秒)更新を狙った。新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出されるなか、海外からペースメーカーを招へいできなかったため、特別措置として国内男子のペースメーカーを配置。また出場選手も2時間50分が規準となり90人ほど、超エリートランナーに絞られた。序盤、川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)、岩田勇治(三菱重工)が日本記録更新のペース1㌔3分18秒を軸にペースを刻んだが、13キロ過ぎには前田が脱落。一山はハーフを1時間9分35秒で通過し、途中タイムのアップダウンはあったが、2時間21分10秒の大会新記録で1位となった。一山は昨年の名古屋に続いてマラソン2連勝となる。
前田も日本記録ペースを落ちた後に崩れず粘り、2時間23分30秒と、自己ベストを更新する走りで2位を守った。前田は、一昨年19年9月以来、一山も昨年3月の名古屋以来と、ともにレース間隔があき、コロナ禍でのトレーニングも困難な状況に。一山は年末に扁桃腺を痛め、前田も足底筋に不安があるなか、大会新、自己新と、代表としての実力はしっかりと示す結果となった。五輪の延期で「長すぎる代表」を維持する緊張感、難しさを改めて示すレースとなった。
今大会は男女混合レースの形となったため、一山の記録と、野口みずきが03年にマークした2時間21分18秒が大会記録として記される。大会が迫る1月に入ってからの緊急事態宣言の発出で、大会中止が検討された。万が一を想定して、10月、公式認定の資格を持った計測員が周回コースを測定。これを大阪女子マラソンの「サブコース」として日本陸連の公式コースに指定していたいわば「保険」が、40回の歴史とコロナ禍でのスポーツの存続につながった。
一山(会見から) (優勝と大会新記録の更新にも)嬉しいと思ってゴールはできなかった。練習でやり残したと思ったことはなかったので、ただただ力が足りなかったというのが正直な気持ち。レース中に3回、苦しくなってよしもう1回と立て直した。1㌔3分17,18秒の日本記録ペースを体感できたのはよかった。(オリンピックについて)やってくれると信じて、最高の走りができるように最高の準備をする。
永山監督によると、一山は年末、扁桃腺を痛めで当初予定していた練習に空白が生まれてしまったという。監督は「想定外のことが起きてしまい、私自身が(日本記録更新への)自信を持って送り出してやれなかった。ただよく耐え抜いたのは素晴らしい」と、一時は流動食しか口にできないほどつらい思いから短期間でここまでもってきた力を称えた。
前田(会見から) 自己ベストは更新できて良かったし、いい経験になったレースだった。(MGCから1年4ケ月も間があき)前半でなかなかうまくリズムに乗れないまま、後半になると「長いな」と感じてしまった。色々なレースがなくなってしまい、疲労が出てしまい疲れが取れなくなることが多かったが、ここからまた体調を整えて行こうと思う。
武富監督は、前田の前半での脱落について、足底の圧迫があったようだ、と話した。足底筋をレース中に痛めたようで、前田の伸びのあるストライドは見られなかった。さらに、天満屋が大きなレース前に常に練習、調整を行う米国アルバカーキ(ニューメキシコ州)での高地トレーニングがコロナ禍でできなくなった点をあげ、「自分の積み重ねてきたものも含めて(練習や、記録の比較など)国内の練習では前田にどう負荷をかければいいか、落とせばいいのか、中途半端になってしまい迷いがあった」と明かした。