スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2020年11月 8日 (日)

内村航平2年ぶりの国際大会で鉄棒H難度「ブレトシュナイダー」着地 五輪に1歩前進 コロナ禍で初の国際競技会が五輪への試金石に「めちゃくちゃ楽しかった」

8日=東京・代々木第一体育館 新型コロナウイルスによる東京五輪の延期など、国際大会の開催を断念してきた国内で、コロナ禍で初めて体操の日中米露4か国による国際競技会が行われた。大会前にPCR検査で「偽陽性」と判定され、一時は隔離のために練習を中断した内村航平(31=リンガーハット)は鉄棒でH難度の「ブレトシュナイダー」(コバチ2回ひねり)を試合で初めて成功させ15・200点をマーク。9月、初めて試合で披露した際には(全日本シニア)肘が曲がってしまったが、今回は修正し、世界チャンピオンを抑える高得点をあげ、種目別で狙う東京オリンピックに向けて1歩踏み出した。ほかに跳馬、あん馬、ゆかと今回は4種目に出場した。
大会は、コロナ禍での国際競技会として、陰性を証明しての入国、大会期間中は「バブル」と呼ばれる、陰性の確認が取れている関係者だけの行動網で生活する徹底した隔離対策などを実施。これが東京五輪・パラリンピックへの試金石になるとされる。ビデオメッセージを寄せたトーマス・バッハIOC会長は「スポーツ界にとって非常に重要なシグナルとなる。東京を目指す私たちにとって自信を与えてくれるものになる」とコメントした。会場には、2020組織委員会・森会長、小池都知事、萩生田・文部科学大臣、橋本・五輪担当大臣、山下・JOC会長が来賓として観戦した。森会長
は「素晴らしい大会を開けたことの感動と喜びを分かち合いたい。この大会を開けないと来年の五輪も開けない。この大会が成功すれば、来週日本にバッハ会長がやってくる(15日来日予定)。選手がお互いに談笑し、セレモニーでメダルを掛け合う。断裂した社会にあって融和、融合をスポーツが示せてうれしく思う」とあいさつした。寺本明日香は選手を代表し、選手たちが隔離などを経て来日したことへの感謝を込め、「皆さん無事にウチに帰って下さい」と話し、会場と選手から大きな拍手を受けていた。
※大会セレモニー中に、来年21年10月、体操と新体操を同時に行う初めての世界選手権が北九州で行われると発表された。
内村 この大会を開催して頂いて本当にありがとうございました。確実に、東京オリンピックに向けていい形でつなげられた。表情を見てもらえれば分かると思いますが、めちゃくちゃ楽しかった。コロナ禍で練習をうまくできない選手もいたり、試合が全くなくなってしまったりした選手がほとんど。久々に会って、その感情をぶつけあって、それが化学反応を起こして、オリンピックにつながるとかではなくて本当に楽しめました。国民の皆さんが東京五輪ができないんじゃないか、というのが80%超えているという。できない、んじゃなくて、どうやったらできるか、考え方を変えて欲しいなと思う。非常に大変だと承知で言っていますが、国民とアスリートが同じ気持ちじゃないと大会はできない。どうにかできるやり方はあると思うので、できない、とは思わないで欲しいなと思います。東京五輪が成功した後には北九州市で世界選手権になる。もし出ることができれば人生で2度目の国内での試合になる。自国で五輪を迎えるだけでなく、世界選手権も自分の故郷(九州)である。この上ない幸せが来年あるな、と思っています。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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