スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2020年9月26日 (土)

「五輪の目標はずっと金メダル。環境と技術を求めて拠点移す」100㍍日本記録保持者、サニブラウン・ハキーム一時帰国中に会見

26日=都内 陸上男子短距離100㍍の日本記録保持者(9秒97)、サニブラウン・ハキーム(21)が都内で取材に応じ、コロナ禍で1レースも走らずに終える異例のシーズンに「(五輪の)目標自体はずっと一番高い金メダルに設定している。1年伸びて、できることは増えたと思っている」と、焦る様子もなく、ちょうどこの日、2度目の「300日前」となった東京五輪を見据えた。会場の国立競技場も「入りたかった」と笑い、「外から見学」をしたという。当初の狙い通り、100、200の個人種目での好結果を400㍍リレーにつなげたいとした。コロナ禍で本格的に再スタートできたのは7月以降だと振り返った。しかし、半そでのTシャツ、ランニングパンツにシューズと、トレーニング仕様のウエアで堂々と会見場に入ってくると、筋肉をしっかりとまとった足が、充実した練習ぶりを物語っているようだった。
 7月、練習拠点を米フロリダ大から同州の「タンブルウィードTC」に移し、リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銅メダルのアンドレ・ドグラス(カナダ)や、3段跳びで五輪2連覇のクリスチャン・テーラー(米国)ら世界レベルで日々トレーニングできる環境下で自分を高めている。拠点を移した理由だ。現在は大学を休学中で、休暇とビザ手続きのため一時帰国した。
 同時に、技術面もさらに高めるための判断だった。17年に指導を受けていたレイナ・レイダー氏には、「(以前よりも)重心が下がっている」と指摘をされた。同氏の指導を受けた2017年は、日本選手権100m、200mで二冠を達成。ロンドン世界陸上では大会史上最年少で200mファイナリストとなり、100mでも準決勝に進出した。それだけに、同氏の「重心が・・・」の一言は胸に響いたのかもしれない。
 
大学で筋力トレーニングを行い、パワーアップしたのも低い重心の遠因にはなる。「今は高く保って走ることに取り組んでいる。小さな部分だが、大きな変化になれば」と、金メダルを狙うため、華やかさとは裏腹の地道なトレーニングに臨む。レースの予定は立てず、先ずはフォーム固め重心、バランスを見直していく。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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