東京五輪に向け第1回調整会議 年内にコロナ対策への報告書をまとめる 「できれば無観客は避けたい」武藤事務総長
4日=晴海トリトンスクエア 2021年に延期された2020東京オリンピック・パラリンピックの現実的な実務を進めるため、政府、東京都、大会組織委員会が、アスリートへの新型コロナウイルス感染防止対策を話し合う第1回の会合、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会における新型コロナウイルス感染症対策調整会議」が総理大臣官邸で行われた。組織委員会の武藤敏郎総長が組織員会に戻って取材に応じ、今後「アスリート、大会関係者、観客の3つの観点から(必要な感染予防対策を)論点を整理し、年内には中間報告としてとりまとめたい」と、今後9月中にアスリートの入国管理や輸送、10月には選手村、競技会場の感染予防対策、自治体の対応、11月には観客について、政府、東京都、組織委員会で話し合いを継続するスケジュールも明かした。
調整会議では今後、選手が入国する際の待機免除、制限緩和についても検討する。現在は、コロナ対策と同時に約200項目で五輪の簡素化という難題も突き付けられている。武藤氏は、コロナ対策と簡素化は並行していると前提したうえで「できれば無観客は避けたい」と、希望した。
常に注意力を張り巡らして会見を行う武藤氏がこの日は珍しく「少し話が脱線してしまいますが」と、古代五輪が行われていたギリシャでも、戦争と感染症にも苦労したとの、あくまでも説を引き合いに出した。「克服するにはどうすればいいかとデルフォイの神殿にたずねて、“平和と感染症を克服するために五輪を行う”と神託を受けたのが古代オリンピックの始まりだったと言われている。コロナ感染症を克服して東京大会を開催するのは、いわば五輪の原点であるとさえ思っている」と、東京の現状を古代五輪になぞらえていたが、唐突だった。
本来、この会議の「要」は、延期をIOCに提案した安倍晋三首相だった。東京大会実現の姿勢に変わりなく、IOC、政府、組織委員会が一枚岩であるとアピールはしたが、13年の招致成功でも先頭に立った「要」を失った状況で、いつ、誰が、どうやって、開催判断をするのか。開催可否の決定権を持つIOCも、感染が収束しない中強硬突破をすれば批判を浴び、オリンピックの付加価値が一気に低下するリスクを負う。今後、コロナウイルスの第三波、インフルエンザと、国内の医療体制はさらに厳しくなるかもしれない。こうした苦境での開催可否の決定に、IOCが主導権を握ってリードするかどうか不明だ。
第二回会議は今月下旬を予定し、IOCの調整委員会も今月中に行われる。