スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2020年8月11日 (火)

Jリーグとプロ野球 直前の試合中止回避に、独自の基準で濃厚接触者を特定へ 保健所の業務過多に配慮

11日=オンライン会見 Jリーグは午後にオンラインで臨時実行委員会を開き、公式戦の直前に新型コロナウイルスの陽性者を確認した場合、保健所で濃厚接触者を特定するまで時間がかかるために生じる問題への対応を検討した。また、8月末までとしていた「5000人または収容人数の50%の少ない方」を上限とする観客動員についても、9月6日まで延長すると決めた。
  感染拡大が全国に広がるなか、保健所の業務を煩雑になる一方で働く職員の健康問題も取り上げられる。そうした中、開催日に合わせて保健所に判断を急ぐような事態は避けるべきとの配慮から、これまでJ
リーグに陽性者が出た際、保健所が「濃厚接触者」と判定した例、反対に「これは濃厚接触には当たらない」とした例を細かく調査。あくまでこれら保健所の判断を最優先したうえで、Jリーグが、「濃厚接触者疑い」を決める独自の基準を設けると決定した。該当者はチームからすぐに隔離し、クラスターでない限りは試合を開催する方針を各クラブで共有する。
 「濃厚接触疑い」とする判断基準は、陽性者と発症日の2日前以降の接触を確認のうえ、①日常的に接している者(選手と担当通訳、寮の同室など)②陽性者と店で飲食を共にした者 ③発症5日前でも陽性者と1時間以上の会食を共にした者などとした。

 J1とJ2では、保健所による濃厚接触者の特定が間に合わず、7~8月に2週連続で試合直前での中止を決定。プロ野球でも今月になって開幕後では初の陽性者が確認され、野球とサッカーで3試合が中止となった。11日午前に行われたプロ野球との「対策連絡会議」(第13回)でもこの点が主な議題となった。斉藤コミッショナーは「クラスターの場合、中止はやむをえないが、数名程度の選手の感染確認の場合は、われわれで濃厚接触者をできるだけ特定し、試合を開催できたらと思う」と話し、村井満チェアマンも「(保健所の)判断が我々に合わせて頂くというのは無理な話。濃厚接触者の特定がされないために、ただ待っているだけの空白の時間を作るのはさらなるリスクにつながる。保健所の基準をもとに独自に判断をして、感染防止をしていく」と説明した。 
 賀来満夫座長は、保健所の業務に負担をかけず、プロスポーツという特性を理解してもらった上で、迅速に濃厚接触者を割り出すために「各クラブとも保健所とのさらなる連携をお願いしたい。そのためにも、選手たちが今も大変細かくつけて下さっている行動記録をさらにしっかりと付けて頂ければ、保健所にとっても助けになる」と助言した。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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