スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2020年2月 3日 (月)

52歳の筋肉痛、17歳の「プロ初」ゴール Jリーグの宮崎キャンプの楽しみ方

2日=宮崎(快晴、気温14度) 2月1日は一斉にキャンプ入りするプロ野球にとって「元日」と言われる。1月31日の金曜日、宮崎に向かうために到着した羽田空港は、GWや夏休みなどとはちょっと違い、プロ野球の球団グッズを身に付けている親子連れやカップルで賑わっていた。今年は「元日」が土曜日となり、31日の最終便は、仕事終わりで空港に直行したと思われるお父さんが、自宅から来た子供たち、お母さんと合流、おそらく2泊分の荷物を詰めたスーツケースを引く。それぞれが違うチームのグッズを身につけていて、「元日」を楽しみに選手情報を交換する。高揚感が漂いこんなに楽しい最終便に乗れる機会などなかなかないだろう。
 サッカーは1日、トレーニングマッチが各地で行われ、横浜FCのキャンプ地日南では、地元JFLの「テゲバジャーロ宮崎」と40分×3本の練習試合が行われた。今季、13年ぶりのJ1を戦う横浜FCにとって、和歌山のキャンプから初めての実践1本目、41歳の中村俊輔、40歳の南雄太、38歳の松井大輔が揃って先発。の40分間、トップ下にはMF中村が入った。ボール保持をひとつの課題にするチームにとって、昨シーズンボランチだったレフティが本来のポジションに戻れば、攻撃の選択肢は大幅に増える。下平監督も「本来のポジション、もともとそこが彼のポジションですから」と、期待する。
 カズは臀部の痛みから、早ければ4日のトレーニングマッチからの復帰を目指す。トレーニングは続けており「(この辺が、と腰から下を指して)筋肉痛だらけ」と笑い、1日は、ブラジル・リオの名門、ボタフォゴへの移籍が決まった本田圭佑、セリエAサンプドリアに期限付きで移籍する吉田麻也について、メディアのリクエストに応じてエールを送った。
 「(ブラジルは)日系人も日本人も多いから、みんな喜んでいるんじゃないかな」
 新加入する本田についてよりも先に、迎える側について「喜ぶ」とコメントするのは、アウェーを生きてきたフットボーラーの優しさなのだろう。「プレーについて僕が彼にアドバイスするなんて何もないけれど、とにかく向こうでの生活を楽しんでほしいよね」と、リオビーチの美しさや街の治安について助言した。吉田は、かつてカズが所属した「ジェノア」のライバルチームに移籍するが、同じ町に住むことになった。吉田は電話で「カズさんが住んだ町に住めるなんて嬉しいです」と話したそうだ。
 ベテランが揃うチームは独特の持ち味を、J1で見せてくれそうだ。

2日は、40、50代のベテランから一気に若返る17歳のルーキーのゴールを見た。C大阪のU―20日本代表MF西川潤(17)は、2日、宮崎市内で行われた長崎との練習試合(1-2)で「プロ初ゴール」を決めた。宮崎キャンプ最終日、1日の広島戦に出場しなかったサブ組が登場し、西川は4―4―2の右MFで先発。前半39分、左サイドバックのクロスに逆サイドから大きなジャンプで飛び込み、ヘディングゴール。「ゴールに直結するプレーができてよかった」と話したが、開幕スタメンを狙う上ではライバルもいる。FW南野(リバプール)以来となる高卒新人の開幕スタメンは「気にならないわけない。現状を真摯に受け止めて、勝ち取っていきたい」と、舞い上がる様子もなく落ち着いて言った。
 52歳が筋肉痛に手ごたえをつかみ、17歳は「プロ初ゴール」で自信を手にする。キャンプ中の様々なシーンが2月21日、「金J」で始まる2020年Jリーグへとつながっていくと思うと楽しみが増える。金曜日の機内で声を弾ませていた野球ファンたちもきっと同じ想いなのだろう。

 

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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