スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年12月17日 (火)

日本陸連強化委員会 東京五輪400㍍リレーのメダル獲得に異例の個人種目出場制限案「個人の種目でメダルを取るため練習している」サニブラウンら現場は困惑?

16日=都内ホテル(港区) 日本陸連は理事会を開き、強化委員会・麻場一徳委員長が、既に決定していた20年東京五輪の代表選考方法に、「100または200メートルの代表選手については、400メートルリレーへの出走が想定されることから、競技日程による身体的負担を考慮し、個人種目の代表選手としての選考は、原則として1種目のみとする」という補足文を付け加えた理由を説明した。麻場氏は「メダルは必須。金を狙うにはベストメンバーでないと到達できない。デリケートな問題でもあるので、アスリート委員会、選手とも議論を尽くして最終決定したい」と、来年3月の理事会で正式決定をするまで確定ではないとしたが、現場強化サイドの強い意向として提案された格好だ。
 プロに転向したばかりのサニブラウン・ハキーム(20)は17、19年の日本選手権で100、200の2冠を達成。帰国した15日もこの2種目で東京五輪を目指すと意欲を見せていた。今年9秒98をマークした小池も短距離2種目で五輪参加標準記録を突破済みだ。サニブラウンは表彰式後、「あくまで個人の両種目でメダルを取るために練習している。リレーは二の次で選ばれればベストを尽くす」と、明言した。小池も「2種目できる選手もいるし、複数種目でケガを心配する選手もいる。一括ではなく個々で相談するのがいいのでは」と見解を示した。
 
陸連強化委は今後、アスリート委員会など広く議論をすると話すが、そもそも個人競技でリレーを最優先する方針、選手の権利にも触れるような「強化策」は、世界的にも波紋を呼ぶだろう。また強化委員会は、複数種目を走った際のケガのリスク、リレーへの影響など、数値や科学的な根拠を今のところ示していない

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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