スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年11月 5日 (火)

瀬古利彦リーダー「IOCという力の前で我々はどうにもできない」公式に初めて心境吐露 服部勇馬の「瀬古さんのボイコットと違い走れるんだから幸せ」に涙 

5日=ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア(東京新宿区)東京五輪のマラソンと競歩の札幌移転ついて、日本陸上競技連盟の現場強化を担当する強化委員会が初めて委員会としての会見を開き、瀬古・プロジェクトリーダーは初めて、ここまで意見さえ公にしてこなかった理由について、「(64年の)東京五輪で円谷先輩(幸吉氏)が国立競技場に帰ってきて銅メダルを取ったのがずっと頭にあって、今度も東京でメダルとの思いでずっとやってきたが、IOCという力の前で我々はどうにもできない。(強く反論をしてしまうと)じゃあ、オリンピックでマラソンはやらなくてもいい、と(IOCにもう一度)言われるのではないかという思いがあった」と、心境を吐露した。また、MGC(9月)に2位となり代表に内定している服部勇馬から「瀬古さんの(ボイコットのモスクワ五輪)時に比べたら僕らは走れるんだから幸せです」と声をかけられたと明かし「涙が出ました」と会見中に声を震わせた。選手、現場の声を集めた意見書は日本陸連にメールで届けたそうだが、日本陸連は明らかにはしなかった。日本陸連・横川会長は国際陸連の理事会メンバーでドーハ世界陸上の際に再選を果たしたばかり。しかし今回の移転をバッハ会長と話していたセバスチャン・コー国際陸連会長からは連絡はなく、その後も「適時連絡を取っていた」と、様子伺いを慎重にしていた。会見では、麻場強化委員長、瀬古氏、河野委員長、山下佐知子女子強化担当、競歩の今村文男氏らが皆、「気持ちを切り替えるのは難しいが、ネガティブでいるのは選手によくない。今日から切り替える」とIOCの決定を不服としながら、切り替えようと苦悩する率直な姿勢を示していた。強化委員会はどんなに遅くても12月にはコース、日時の決定をとした。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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