スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年10月11日 (金)

モンゴルに6-0の完勝も、贅沢な願いを言うなら、賢さだけではなく武骨な代表も見たかった

 モンゴルを相手に6-0でホーム初戦を滑り出し、勝ち点3を奪ってアウェーのタジキスタンに臨む状況は、これ以上ない結果だ。ロシア大会の2次予選ホーム初戦のシンガポール戦がスコアレスドローで終わった苦い経験を、当時を知る選手たちが教訓に変えて結果に結びつけた姿勢も素晴らしいものだった。シュート32本(公式記録)で6本のゴールを決め、うちヘディング5点、森保監督が試合前に選手に伝えた「相手が中を固めてくるだろう。スマートに戦おう」という指示通り、ゴールは両サイドからの効果的なボールから生まれている。中を固められた際のセオリー通り徹底した戦術を貫いた。
 しかし、贅沢な願いをあえていえば、これだけ力の差がある相手にだからこそ、無理な中央突破を狙い、強いくさびを打ち込み、狭いスペースを崩し、選択肢の最後にサイドに行く、そういう勇敢というか、武骨な日本代表を見たかった。この日、中央突破も強引なドリブルも見られず、「あーあ」とため息をもらすような攻撃はなかった。ホーム初戦の満員のスタジアムで試合をしたモンゴルに、徹底して中を固め、監督が言った「保守的に」戦う余裕は本当は全くなく、ワイス監督は「最初の20分はそれができたが、あとはスペースを与えてしまった」と話している。
 この先、本当に中を固めて徹底して守る相手と試合をする難しさに直面するはずで、モンゴルがそういう強敵だったようには見えない。
この4年で、チームのスタイルもメンバーも平均年齢も変わった。大きく進化しているのは間違いない。ロシアW杯まで、長く代表を引っ張った選手たちのスマートさより不器用で、どこか武骨なメンタリティも継いで、まずはタジキスタンで2次予選3連勝を。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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