スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年9月29日 (日)

「祈るしかないな」(森長)「僕も祈ろうかと・・でも祈っていたら負けちゃうんじゃ・・・」(橋岡)祈らず跳ぶ師弟が掴んだ最高位

 1997年のアテネ大会で森長正樹が9位に入って以来、長く塗り替えられなかった男子走り幅跳びの日本最高位は、森長と愛弟子のコンビによって塗り替えられた。1本目から、6人が8㍍越えジャンプをするハイレベルな決勝、橋岡は1本目7㍍88、2本目7㍍89と伸ばして3本目に臨んだ。向い風0・2㍍、助走スピードと踏切りのタイミングを1、2本目で修正し7㍍79をマーク。3本目のこの記録が、同じく3本目でマークされたスウェーデン選手の7㍍96とわずか1センチ差で、12人の決勝から入賞が決まる8人への3本目以降へと進出した強運も見逃せない。
 森長は「(ベスト8に入れるかどうか)祈るしかないな」と、どこかユーモアを漂わせてスタンドから声をかけてくれたと橋岡は明かす。
 「僕も祈ろうかと・・・でも祈っていたら負けちゃうんじゃないかって。太もも、足さきを使うなど踏切りのアドバイスをもらってうまく修正はできたと思います」2人で祈らず、攻めて良かった。
 橋岡は安定したジャンプを揃えて、「恩師越え」を果たし初の世界陸上を来年の東京五輪へとつなげた。昨年のU-20世界選手権ではこの種目日本初の金メダルを獲得し、同じ会場で開かれたアジア選手権(4月)にも優勝するなど、大舞台には強い。東京に向けてさらに自信を得るためにも、今後は「ダイヤモンドリーグ」(最高位のサーキット)を回るなどして「もっと上を目指す」と、手応えを口にした。

 

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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