スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年8月29日 (木)

内村航平4か月ぶり復帰 「体操をどうやっていたかさえ分からなくなったが、あぁこれだよな、と思えるようになった」腰痛再発も新発見を楽しむ

29日=福井県営体育館 全日本シニア・マスターズ体操競技選手権(30日=9月1日)の公式会見が行われ、今年4月の全日本で両肩を痛め、予選落ち(37位)した五輪チャンピオン・内村航平(30=リンガーハット)が、4か月ぶりの復帰戦に臨む心境を明かした。治療から本格的な練習をスタートさせたのは1か月半ほど前で、肩の痛みは順調に快復していたものの2週間前に鉄棒の着地で、ぎっくり腰のような状態になってしまったという。28日には会場で練習を行い、「痛みはまだある。鉄棒でリオの個人総合の時のようになってしまったので、またやってしまう不安はある。(最初の)床から入って平行棒までは心配なく行けると思う」と、新たな難敵に不安を吐露した。一方で、「今の状態でどこまで自分ができるかを確認したい。それが次につながる」とポジティブさを見せる。全日本直後は体操に苦痛さえ感じたが、治療で痛みが薄れるなかで「もともともずっと(体操が)できていたはずだったのに、いい動きをどうやっていたのかも分からなくなった。痛みが取れて徐々に、あぁこれだよな、と思えた。楽しいから体操を始め、世界一になって、それでも楽しいからやってこられた。発見が今もある。それが自分を突き動かしている」と、世界選手権、五輪といった具体的な目標のために体操をしていただけでは味わえなかった、自身のルーツとも向き合えたようだ。30日の競技会では、全体的には難度を下げ、ミスなく自信を取り戻すために演技をするプランで、中でも、平行棒の下り技だけは「世界的に見てもそこだけは(下り技での進化)東京を目指すうえでも絶対にやっておいてほうがいい。集中してやりたい」と、新しい折り技に挑む。1年前のテストイベントや世界選手権が続いた夏、前人未踏の勝利をあげてきた王者は、「まだスタートラインにも立っていない。でも1年あるっていう前向きな気持ち」と、真のプライドをにじませた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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