「たったひとつの武器、若さを何も活かさなかったチリ戦」1失点目、誰もボールをかき出さず、鼓舞せずただ落胆
17日(日本時間18日午前)=サンパウロ・モルンビスタジアム 20年ぶりのコパ・アメリカに臨んだ日本代表は、代表での初先発が6人の顔ぶれで4バックを敷いた(GKに大迫敬介(広島)、DF、杉岡大暉、植田直通、冨安健洋、原輝綺、ボランチに中山雄太と柴崎岳、2列目には前田大然、中島翔哉、久保建英、ワントップ上田綺世)。
森保監督は試合前選手に、「アグレッシブに勇敢にチャレンジ精神を持って戦って欲しい」と伝えると話していた。そして、「最低でも勝ち点1まで粘る」と、ゲームプランを明かしていたが、試合中、粘るどころか、勝利や、自分たちの置かれた状況に非常に淡泊な様子は、1点目と2点目の失点シーンに表れていた。
平均年齢22歳という若い、しかも今大会の「お客様」日本に、ベテラン揃いのチリは「若さと勢いには成熟したサッカーで対抗する」と、鋭いスライディング、球際の強さ、セカンドボールへの執念、セットプレーでの集中力といった実に泥臭い手法でじりじりと日本を追い詰めた。前半41分、CKから失点を喫する。この時、ボールはゴールにしばらく残されようやくセンターラインに戻っていった。選手たちはごく普通のリアクションで顔を下げ落胆し、互いに声をかけ合うこともない。久保のプレーのクオリティは言うまでもなく、カタールで活躍する中島も同じ。しかし失点した時にボールをかきだし、声を出し、チームを鼓舞し、「まだまだ1点、顔あげろ!」と怒鳴る選手が誰1人いなかった。連覇中の強豪、チリに一発パンチを見舞われるなんて当たり前なのに。
もし五輪世代がこの大会に「日本代表として」爪痕を残せるとすれば、たとえ何回ゴールを奪われても、そこで立ち上がろうとする意地、打たれても、打たれても相手に立ち向かおうとする姿にだけあったはずだ。そしてチリが唯一恐れていたのは、久保たちのテクニックなどでは全くなく、怖いもの知らずで、立ち向かってくる「若さ」という戦い方だけだったはずだ。
前半が終わり、階段を下りてロッカーに向うシーンも印象的だった。互いに声をあげて派手なジェスチャーで指示し合うチリに対し、日本はそれぞれがバラバラに、ただうつむいてロッカーに引き上げる。自分たちは若いから、代表経験も、これほどの相手と戦ったキャリアがないのだから仕方ない、と心のどこかで言い訳しているのではないか。
後半になってFW・岡崎が投入され、3失点目に真っ先にボールをかきだしに行った姿に、今回の若い代表が先ず何にチャレンジしなくてはいけないが明白に示されたように思う。彼らは見ていただろうか。
技術も戦術も、全てにおいて今大会、日本が上回れる国などないはずだ。しかしたったひとつ、どんな強豪にも互角に争えるか上回れるものがあるとすれば、この大会にこの若いメンバーで来た意味を見いだせるとすれば、歴代の日本代表が刻んできた、闘争心や反骨心をこれだけ若い世代が新たにどうやって表現するかだ。
年齢など関係ない。自分だけがどういうプレーができればいい、といった話でもない。
自分のアピールやプレーの出来ばえなどといった話以前に、「日本代表はどういう場所」かをもう一度思い、今大会優勝候補筆頭、チリと同じく若い相手に手抜きなどせず、むしろ徹底的に叩き潰そうとするウルグアイに挑めるはずだ。
先発でワントップをつとめ、決定機を逃した上田にも、入らなかったシュートの技術の反省と同時に、カズは、中山雅史は、大久保嘉人は、本田圭佑は、そして何より目の前にいる岡崎は、日本代表のゴールゲッターたちは、FWとして何をチームに与えてきたか、考える時間はあるだろう。