スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2019年5月12日 (日)

北京五輪男子400㍍リレー銅から銀へ繰り上がりメダル授与式「ドーピングのない世界でやってきた心に秘めた誇りは変わらない」末続慎吾

12日=日産スタジアム IAAF世界リレー大会(11、12日)で、北京五輪男子400㍍リレーで日本初となる銅メダルを獲得した塚原直貴(34)、ただ1人の現役・末続慎吾(38)、高平慎士(34)、朝原宣治(46)の4人が、ジャマイカのドーピングによる失格で繰り上がった銀メダルをセバスチャン・コー国際陸連会長から授与された。当時とは違い、4人ともがダークスーツ、革靴での表彰となったが、それでも幾度となく挑戦しながら跳ね返されてきたメダルの壁を初めて突破したレジェンドたちは「皆さんの前で喜びを分かち合えて本当に嬉しい。これからは銀メダリストとして生きていきます」(朝原)とのあいさつし、笑顔を見せた。同五輪では、100㍍の世界記録を樹立したジャマイカのウサイン・ボルトがアンカーを務めたジャマイカが37秒10の世界新記録で金メダル、トリニダード・トバコが38秒06で銀メダル、日本は38秒15で銅メダルだった。ジャマイカ1走のカーターが北京から9年経った17年1月にドーピング違反で失格。これにより、4位だったブラジルの銅メダルまで順位を繰り上げ、各国とも北京のメダルをいったん返却して手元に渡った。アンチドーピングの啓蒙活動にも関わる末続は会見で「もの心ついて走り始めた時からこの世界にドーピングはあり、それを分かった上で戦ってきた。スポーツにはルールがあり、してはいけないドーピングがあるのならそれはスポーツではない。そういう世界でスポーツをしない、という心に秘めた誇りは変わらない」と、複雑な心境をのぞかせながらも、クリーンで掴んだ栄誉に胸を張った。
 また朝原は、12日、サニブラウン・ハキ―ム(20=フロリダ大)がアメリカ・アーカンソーで行われた大学南東地区選手権100㍍決勝で日本歴代2位となる9秒99(追い風1・9メートル)で優勝したレースにも触れ、「驚かないくらい(大きな)期待があった。やっぱり、という気持も、いやまだまだ行くなという期待感もある。来年の東京五輪で個人でも(100㍍、200㍍)メダルが狙えるような逸材かなと思う」と激励した

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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