スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2018年12月 2日 (日)

Jリーグ2日連続の劇的展開「原因を人のせいにせず自分自身に向けて情熱を持ち続ける」カズの言葉

アディショナルタイム7分と表示された6分、東京Vは右CKを得て、GK上福元もゴール前に参戦した。佐藤からのボールに、まるでFWのようにファーからニアサイドにDFを振り切って強烈なヘディングで飛び込んだ。横浜FCの南雄太が手で一度は弾いたが、このこぼれ球をドウグラスが右足で押し込んで土壇場で横浜FCを突き放した。ドウグラス・ヴィエイラは「非常に難しい試合で感情的になった。相手も引き分け狙いではなく勝ちに来た」と、奇跡の「逆転」を振り返り、「目標のJ1昇格をつかみ取りにいきたい」と8日の決定戦に気持ちを向けた。

1日、J1最終節では5クラブ(磐田、湘南、鳥栖、名古屋、横浜M)が「J2昇格プレーオフ」出場の16位を争う大混戦に。優勝を決めている川崎から、古巣・川崎で3年連続得点王の偉業を成し遂げた大久保が先制ゴールを奪って残留に大きく前進したはずの磐田だったが同点にされ、それでもまだ16位争いでは優位にいたはずがラストプレーのオウンゴールで16位となった。

1日、大久保嘉人が古巣相手に、好きなホームで決めた先制点と、主将、大井健太郎のオウンゴール、2日、最後のセットプレーにFW並みの動きでゴールをおぜん立てしたGK上福元、結果だけではなくそのプロセスもあまりにドラマチックで、書こうと思っても描けないシナリオだろう。
 さらに、東京Vが前回J1昇格を決めた07年は、黄金時代を築いた磐田を出て、ヴェルディの10番を託された名波浩監督と、服部年宏2人がシーズン通してチームを引っ張り貢献した年だ。服部はヴェルディで2度も解雇されるという不条理な人事も味わっている。 

16位が決まり、今度は2人がプレーした時以来の昇格に挑んでくる東京Vが相手だとは、これもシーズン前、思いもつかないカードになった。スポーツの、サッカーの恐ろしさと、とてつもないストーリーを目の当たりにすると、「万が一」も、「何が起きるか分からない」もここではいつもの光景なのだと改めて思い知らされる。

三ツ沢ではベンチでチームメートを鼓舞し続け、出場できなかったカズ(三浦知良)が早々と競技場を後にした。しかしメディアの質問には立ち止った。今季は45試合で、43試合でベンチ入りしたがリーグの先発はなく、12年ぶりの昇格も夢に終わった。

 「J1の夢は、そう甘いものではない。なぜ届かなかったのか、人のせいにするんではなく、原因は自分たちのほうにあるんだと考えなくてはいけない。そして、情熱を持ち続けまた明日から次に向けて努力していく」

こんな劇的なシーンを目撃した後どうしても知りたいのは、勝者ではなく、叩きのめされた敗者の言葉であり姿の方である。それでも立ち上がろうとする51歳の現役の言葉に、メモを取るのを止め聞き入った。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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