スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2017年4月 8日 (土)

J27節 福岡対町田 32歳、4クラブを渡り歩いたベテラン・中島裕希、初ハットトリックで町田8分間の大逆転

8日=福岡・レベスタ(6021人) サッカーJ2の7節が各地で行われ、どしゃぶりの雨と高湿度のタフな条件下で、5戦負けなしながらここ2試合スコアレスドローが続き足踏みする福岡はホーム勝利を目指して町田を迎えた。無得点で迎えた後半21分、CKからゴール前にこぼれたボールを、途中交代で今季初出場のジウシーニョが押し込んで先制に成功する。激しい雨のなか、26分にはウェリントンとの空中戦で町田・増田 繁人が2回目の警告で退場処分に。残り時間10分を切って1点リードで相手は10人と、圧倒的な優位で今季初の完封勝利を掴みかけた42分、途中出場した町田・吉濱遼平のクロスに中島裕希が頭で合わせて同点とされると、90分には再び吉濱の右サイドからのFKを中島がニアに走り込んで頭で入れて逆転された。5分のアディショナルタイムにはカウンターを受け、GKも攻撃参加した無人のゴールに中島に決められ、わずか8分間でのハットトリックを許す。試合中、油断などしているはずもないが、10分を切り、どこかで「楽に勝ちたい」といった受け身の気持ちが町田との駆け引きにスキを生み、大逆転劇で6試合ぶりの敗戦を喫してしまった。7試合で勝ち点14としていた序盤の目標をクリアできず、上位6位までの昇格ラインから離された。
 

 

 

 

 中島は32歳でプロ初のハットトリックを果たした。03年、同郷で憧れの先輩・柳沢敦が所属する鹿島に入ったがFWの激戦で出場機会がなく仙台へ移籍。東日本大震災が起きた11年には仙台で、同年に移籍してきた柳沢の復帰などでベンチ入りもせず2年間でわずか2ゴールの不本意な結果で山形へ移籍した。昨年J2に昇格した町田に移籍し、全42試合に出場しプロで自身最多の14ゴールをあげて今季に臨んでいた。Jリーグ4クラブ目、通算で400試合以上の出場を果たしてきた百戦錬磨のFWは試合後、「プロ初のハットトリックが、こんなに追い込まれた苦しい試合でできるなんて・・・記念になります」と、アウェーのため、わずか2人だけの取材者の前で謙虚に笑った。0-1で10分を切り、福岡選手の足が止まる一方、自分たちの運動量が増えるのを感じたという。「(試合の)2点目がとにかく大事だと思った。退場でも諦めず、割り切ったプレーができた」と分析した。レベスタ周囲の東平尾公園の桜はこの晩満開だった。アウェーでの困難な気象条件、数的不利、劣勢を跳ね返した32歳のいぶし銀のようなハットトリックもまた、満開の夜桜のように圧倒的な存在感を放っていた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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