スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2016年8月 9日 (火)

リオ五輪特集 日本サッカー界が破れない2戦目の厚き壁 手倉森ジャパン 予選最後のスウェーデン戦に決勝T出場の望みつなぐ

手倉森監督は初戦のナイジェリア戦でまさかの5失点を喫したDF陣を率いたGK・櫛引を、jリーグに出場している中村航輔(柏)に交代し負けられない2戦目に挑んだ。どのカテゴリーの大会でも、守護神、の呼び名に代表されるように、不動のGKで大会に挑むのが慣例だろう。「なでしこジャパン」佐々木則夫・前監督が15年W杯カナダ大会で1大会中に3人のGKを起用した例はあったが、男子では過去例のない抜擢が、この試合を象徴した。前半からチャンスメークをしながら得点できずに、何とかスコアレスドローで折り返した後半、テオフィロ・グティエレス のゴールで先制される。

藤春のオウンゴールで0-2とされた際、コロンビアのファンの多くが試合後の混雑を避けるように席を立ったが、「サッカーでは0-2がもっとも危険なスコア」と、セオリーとされる格言は万国共通だったようだ。

2点目を奪った際、中島は手を掲げゴールに入ったボールを指したように見えた。ミドルなので、ゴールまで飛び込むのは無理だろう。ゴール付近には南野らがいた。しかし、南野はゴールに転がったボールをかき出し、「もう1点」と相手にプレッシャーをかける行為はせず、GK・ボニジャが胸に抱え込んだボールに触らずに横を駆け抜けセンターに戻って行った。

初戦でも同じ場面を観た。4点目を奪った鈴木武蔵の粘りは素晴らしい。しかしゴールゲッターたちはボールをかき出しには行かなかった。コロンビア戦でいえば、もう1点取らなくては勝てない。ナイジェリア戦なら少なくてもあと1点なくては勝ち点がない。こういうとても些細なシーンに、まだ、彼らのフットボーラ―としての執念や意地、どん欲さが見えないのが物足りない。

96年アトランタ五輪で復帰を果たして以来、これで6大会目、さらに加えれば98年にフランスW杯に出場して以来ブラジル大会まで5大会、日本代表は常に同じ「2戦目の壁」に跳ね返されている。予選リーグで初戦をものにした大会は別に、初戦を落とした場合の2試合目に勝てた大会は一度もない。五輪では04年のアテネで初戦、に敗れそのまま連敗。08年北京も同様だった。また今大会もナイジェリアに敗れて引き分けとしたが、初戦の黒星を次戦で挽回できないのは日本代表も同じ。98年は初出場だが3連敗。06年ドイツ大会は初戦の豪州戦を落とした2戦目、クロアチアと引き分けた。14年ブラジルでも初戦でコートジボワールに敗れたものの、退場者を出しチャンスがあった2戦目のギリシャ戦を引き分けで終えてしまった。

初戦に照準を合わせるのはもっともだが、そこを落としても2試合目で勝点3を奪う。そういった強さ、ゴールをもう1点奪いに行くという気迫を常に持つどん欲さが、トーナメントを勝ち上がるためには不可欠だ。

引き分けで自力での突破は消え、コロンビア対ナイジェリアの結果によるが、勝てばチャンスはある。監督は「勝つしかないので気持ちを集中し戦える」と、選手を鼓舞した。

 

 

 

4

 

     ー3点目が奪えなかった一因は・・・ー

先ずは、浅野が1点差に追い付くゴールを奪い、中島のシュートはバーにあたって角度を変えてゴールに。マナウスには日本企業、日系企業が多いために試合開始からずっと日本への声援が上回っていたが、この時間帯には、アマゾニアアリーナ全体が後押しし、あと1点も奪える一気呵成のムードがピッチの選手、スタジアムを包んだかに見えた。しかしコロンビアのほぼ倍、16本のシュートを放ちながらも勝ち点3を奪うことはできなかった。

2点目を奪った際、中島は手を掲げゴールに入ったボールを指したように見えた。ミドルなので、ゴールまで飛び込むのは無理だろう。ゴール付近には南野らがいた。しかし、南野はゴールに転がったボールをかき出し、「もう1点」と相手にプレッシャーをかける行為はせず、GK・ボニジャが胸に抱え込んだボールに触らずに横を駆け抜けセンターに戻って行った。

初戦でも同じ場面を観た。点目を奪った鈴木武蔵の粘りは素晴らしい。しかしゴールゲッターたちはボールをかき出しには行かなかった。コロンビア戦でいえば、もう1点取らなくては勝てない。ナイジェリア戦なら少なくてもあと1点なくては勝ち点がない。こういうとても些細なシーンに、まだ、彼らのフットボーラ―としての執念や意地、どん欲さが見えないのが物足りない。
 96年アトランタ五輪で復帰を果たして以来、これで6大会目、さらに加えれば98年にフランスW杯に出場して以来ブラジル大会まで5大会、日本代表は常に同じ「2戦目の壁」に跳ね返されている。予選リーグで初戦をものにした大会は別に、初戦を落とした場合の2試合目に勝てた大会は一度もない。五輪では04年のアテネで初戦、に敗れそのまま連敗。08年北京も同様だった。また今大会もナイジェリアに敗れて引き分けとしたが、初戦の黒星を次戦で挽回できないのは日本代表も同じ。98年は初出場だが3連敗。06年ドイツ大会は初戦の豪州戦を落とした2戦目、クロアチアと引き分けた。14年ブラジルでも初戦でコートジボワールに敗れたものの、退場者を出しチャンスがあった2戦目のギリシャ戦を引き分けで終えてしまった。

初戦に照準を合わせるのはもっともだが、そこを落としても2試合目で勝点3を奪う。そういった強さ、ゴールをもう1点奪いに行くという気迫を常に持つどん欲さが、トーナメントを勝ち上がるためには不可欠だ。

引き分けで自力での突破は消え、コロンビア対ナイジェリアの結果によるが、勝てばチャンスはある。監督は「勝つしかないので気持ちを集中し戦える」と、選手を鼓舞している。

 

 

 



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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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