スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2012年6月23日 (土)

Jリーグ第15節 「浦和対仙台の首位攻防はスコアレスドロー」

 

首位・仙台は浦和のアウェーへ乗り込み00で引き分け、勝ち点を31に伸ばして首位を守った。浦和は同26で3位。広島、大宮もともに譲らずドローで広島は勝ち点29の2位、川崎も横浜Mと00で引き分けて勝ち点26のまま4位と上位陣に順位の変動はなかった。

仙台はここまで15試合で、この日を含めて引き分けが4試合、昨年の同じ15試合消化時点での7試合からほぼ半減した分を勝ちにつなげ、得点も昨年の同試合数消化時点の19点から31点と「大変身」を遂げて首位を堅守。アウェーの浦和でも、その存在感を見せた。手倉森監督が第一関門とする「折り返し17試合で勝点35」の「Vロード」を着々と歩んでいる。持ち味逆転の首位攻防は・・

 

 

 

 「持ち味逆転の首位攻防戦」
 
手倉森監督をはじめ仙台は、試合前のミーティングでボールを保持しながらゆさ揺りをかける浦和の攻撃を警戒したという。FC東京との一戦をその例に、立ち上がりホームの勢いをバックにたたみかけてくる攻撃にひるまぬように、と。
 
ところが、試合開始直後から浦和はしっかりと守ってきた。特に縦への動きには慎重だった。

「アグレッシブに来るか、守備を固めるか、そういう駆け引きを想定した中でのスタートだったので、意外だった」と手倉森監督は試合後振り返り、ペトロビッチ監督も会見で「ああしなければきょうは(仙台の速攻にも)負けていただろう」と、あえて守備に重心を置いた現実的なゲームへの入りを解説。仙台はもはや勢いや必死な戦いぶりで首位に立ったチームではなく、ホームの浦和でさえ慎重にゲームに入らなくてはいけない真の強豪としてとらえられているという意味でもあり、もっとも厳しいアウェーで自分たちの「立ち位置」がはっきりとわかった試合となったのではないか。「堅守速攻」の仙台、「ボールポゼッション」の浦和といった互いの持ち味とは、まったく違った展開でのドローは、そうした意味で重い。

 

 故障者が続出している仙台は、中を固める浦和に対して攻撃がやや単調になったが、「攻撃的な守備」を最後まで続けて勝ち点1を奪取。監督は「勝ち点3を狙った結果の1。大きな意味があった。堅守速攻と言われるが根は攻撃的」と、ボールを保持したこの試合にも手応えを見せた。

昨年は、15試合で引き分け7。これをどれだけ勝ちにつなげるかが今年の課題であり、攻撃力アップの根幹となった。この日の勝点1は、どんな戦い方であってもドローをもぎ取る力を実証したもの。前節2得点をあげてJ通算105点とした柳沢敦は、「タフで非常に厳しい試合だったが、浦和のアウェーで勝ち点3を狙って1を奪ったことは後半戦の大きな自信になるはずだ」と、取れなかった2点より、取った1点の内容に満足な様子だった。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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