スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2011年12月21日 (水)

「松沢社長、キリン杯を海外でやってはどうでしょう?」ザック監督とキリンの戦略一致でアウェーキリン杯も

 ザッケローニ監督(58)はこの日の会見で、同席していたキリンビールの松沢社長に対し「将来的にキリン杯を海外でやってはどうでしょうか」と直訴した。
 2012年10月には、最終予選を1試合残した時点での初の海外遠征(2試合予定)が組み込まれている。北朝鮮戦での敗戦を糧にすべく、監督は就任以来わずか1敗の成績にも満足はせず「本物のアウェーでの勝利」にこだわり続ける理由はもちろん、国際舞台で勝ち抜くための強さをチームの成長のさらなる推進力にするためだ。
 

  来年は最終予選とJリーグの日程調整のためにキリン杯が女子のみの実施となるが、唐突に見え、場内も「まさか」といった笑いに包まれた「直訴」の背景には実は、14年W杯ブラジル大会を視野に入れた強化と、キリンの企業としての戦略も潜んでいる。両者ともターゲットは南米である。

 14年ブラジルでのW杯をひとつの好材料として、今年7月、キリンはブラジル・サンパウロの本拠地を置き、同国のビールシェアでも2位を占める「スキンカリオール」社を買収。同社は、炭酸飲料でも国内シェア3位に位置するなど、キリンにとってもW杯、オリンピック招致に続けて成功したブラジル経済、南米の潜在的な成長率を見込んだ大きな「アウェー戦略」だった。
 今年、日本が招待を受けながら出場を断念
した南米選手権の後(アルゼンチン)、「代わりに、といった意味も込めて、キリンを南米でやってはどうだろう」といった話はすでに関係者の間であがっていた。会見でのザックの直訴に、松沢社長が笑顔で「日本協会さんと相談させていただければ」と、完全否定ではなく、むしろ含みを持たせた返答をしたのは、関係者がこれを認知し、大会実現に向けた布石を打つための一言だったとも取れる。
 アジア杯優勝でブラジルでのコンフェデレーションズ杯への出場は決定しているが、それでも監督は、「できるだけ困難な状況での試合を希望したい」と、「内弁慶」防止対策を原技術委員長に要望。可能な限り、海外で試合を積みたい考えだ。
 10月の海外遠征を初の「海外キリン杯」とする壮大なプランも含め、W杯に向けての強化策は、着実に練られている。

 また、来年6月から始まるW杯最終予選に向けて、最終予選のホーム4試合がすべて「聖地」埼玉スタジアムで行われることも、20日の会見で明らかになった。
 小倉会長は「私ができることは、毎試合、代表、なでしこの試合の前には必ず大仁さんと(副会長)とんかつを食べ続けることくらいです」と会場を笑わせ、男女のAマッチ全試合で、必ず縁起かつぎに「とんかつ」を食べてきたことを披露。さらに「日本代表にとってとても縁起のいい場所で、ザッケローニ監督も気にいっているので」と、全試合を「埼玉スタジアム」にした理由を、縁起かつぎのためと明かした。
 日本代表戦のアジア予選では(親善試合などはのぞき)、ロスタイムに同点に追いつく、勝ち越し点と、ジーコ時代にも、ロスタイム勝ち越し、オウンゴールまで呼び込む神がかり的な試合は全て埼玉。ザック監督就任後も、初戦のアルゼンチンとの親善試合に勝利したのをスタートに、3次予選の初戦、北朝鮮戦でもロスタイムゴールで勝ちきった。
 キャプテンの長谷部誠さえ北朝鮮戦のコイントスで陣地を選ぶ際、「そういえば、何かあったような気がして」と、ホームベンチ側のサイドが後半になるように取るなど、「聖地伝説」は縁起を越えた、代表の強さでもある。
 ホーム埼玉、アウェーのキリン、もしかするととんかつ、が12年の日本代表を占うカギになりそうだ。

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