スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2011年10月10日 (月)

上田藍「ロンドンで、金メダルを取れました」ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦(後編)

「父から贈られた手描き友禅の訪問着」―マイブックから

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――上田さんの絵の腕前は知られていますが、あのカレンダーも(写真参照)?

上田 はい、毎年お世話になった方々にお礼をかねてお渡ししているんです。毎日、何か気が付いたものなど絵にしておくと、イメージも強く残りますし、楽しいでしょう。ロンドンの町が描かれたノートを通販で見つけて購入したんですよ。

――来年のカレンダーは楽しみですねえ。

上田 まだ作成していないのですが、そろそろデザインなど考え始めようかなと思っています。7月27日の開会式から、8月4日が試合ですから、特別なものにします。

――ご実家は、京都の上田工房で、ご両親とも芸術家でらっしゃいますよね。「出藍の誉」から藍さん、と名付けられた。

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上田 母は、今は日本伝統の和紙や便せん、など書道での道具などにも絵を描いています。父は、手描き友禅の職人で、昨年の冬、早くもロンドン五輪のために、と、しだれ桜をあしらったグレーがかった訪問着を仕立ててくれたんです。前回の北京前は、百合の花が入った振り袖でした。

――お父様も、一緒にイメージトレーニングをされているんですね。それを着て、色々なところに招かれるように、と。

上田 父は、宮里藍さんが(女子ゴルフ)活躍されると、「次は、上田藍が頑張る番だよ」と励ましてくれます。父を喜ばせるためにも、着物を着て、招待をしていただけるような活躍をしたい、と心から思っています。
両親の仕事とは全く無関係なトライアスロンをしていますが、絵を描くことだけは私も大好きですし、手描き友禅のような繊細な仕事はできなくても、何かを描くことはずっと続けていきたいと思っています。

――改めてロンドンへの抱負を。16日には、日本選手権も行われますね。

上田 金メダルを狙っていく大会です。8月4日、本当に、「金メダルを取れました、ありがとうございました」と書き込めるように、これからの時間を大切にしていきます。

上田 藍(うえだ・あい)

1983年10月26日生まれ。京都府出身。シャクリー・グリーンタワー・稲毛インター所属。
4歳から水泳を習い始める。中学校では水泳部に、高校では陸上部に所属。高校2年生の冬に、今までの競泳と陸上の経験を生かせるトライアスロンに興味を抱く。高校3年生の夏、兵庫県で開催された「グリーンピア三木大会」に初参戦し、優勝する。3種目を合わせたことで勝利を見出せたトライアスロンの道に進むことを決心する。
高校卒業後、千葉県にある稲毛インターでトライアスロンを本格的に開始する。2002年、日本ジュニアトライアスロン長良川大会で2位となり、優勝を逃した悔しさを味わい、アジア選手権大会で雪辱を果たし優勝。2004年の世界選手権大会で6位入賞。2008年、アジア選手権大会で優勝し、北京五輪への切符を掴み、17位。

トライアスロンとは?

トライアスロンは、健康志向の高いアメリカ西海岸のカリフォルニア州サンディエゴで、1974年に誕生しました。
トライアスロンはスイム、バイク、ランの3種目を連続して行う競技です。
トライアスロンが始められた当時は、距離や競技の組み合わせがいろいろ試されましたが、1982年にバランスのとれた距離として、スイム1.5km、バイク4km、ラン10km、トータル51.5kmが設定されました。現在の世界選手権など、世界で行われる85%以上が、この「ザ・トライアスロン」という規定で開催されています。
また、競技の人気が高まり、160カ国を超える国々でトライアスロンが行われていますが、それとともに種目の細分化が進んでいます。
五輪では、2000年の第27回シドニー大会から正式競技となりました。
日本の女子選手の五輪での最高位は、井出樹里の5位入賞(2008年の北京五輪)。
※出典:JOC(日本オリンピック委員会)

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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