スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2011年8月31日 (水)

「ザック監督 計算できる選手を失ったが・・・」本田、中村離脱の緊急事態にザック監督 W杯アジア3次予選へ日本ピンチ

 9月2日にスタートするサッカーの2014年W杯ブラジル大会、アジア3次予選北朝鮮戦(19時20分、埼玉スタジアム)を前に、ザック監督下の日本代表では11戦10試合に先発してきた大黒柱・本田圭佑(CASKモスクワ)と、南アW杯、前回の予選と、「豊富な経験を活かして欲しい」(監督)と、3次予選で復帰を果した中村憲剛(川崎)のMF2人がともにチームを離脱する緊急事態が起きた。チームは31日午後4時半から埼玉で非公開で練習を行い・・・

 本田は右ひざの半月板損傷で全治など細かい点は明らかにされていないが、日本代表とチームのドクターが話しあった結果、チームに帰ることになり31日中に日本からいったんパリに向けて出発する。中村は右の親指のつけ根の骨にヒビが入っていることが判明。集合時から痛みがあったが、検査の結果明らかになった。原技術委員長は、2人の離脱にともない追加招集をする可能性が高く、国内外の選手を候補に入れているという。「ヨーロッパでプレーする選手、五輪代表から、など、幅広く候補に考えている。北朝鮮戦を終えて、6日のウズベキスタン戦出発前に追加するケースもある」と説明した。

 3次予選でいきなりの緊急事態に、ザック監督は「クオリティを計算できる選手2人がいなくなって、チームは経験を失った」と失望の色は隠せなかったが、それでも「これで日本代表の歴史が終るわけじゃない。2人入る代替選手が、高いモチベーション、高い技術、フレッシュな雰囲気を代表に持ってきてくれればいい」と、切り替えをして前を向いた。

 前々回、06年ドイツ大会の最終予選で、北朝鮮と戦った際には(埼玉スタジアム、ジーコ監督指揮)ロスタイムに大黒将志(現在横浜M)が決めて逃げ切っており、今回も拮抗した試合が予想される。前回の北朝鮮戦も経験している遠藤保仁(G大阪)は「予選は短期決戦ではない分、当然、こうしたアクシデントや今後もコンディションを落とす選手が出てくる。そういうときにガクッと(チーム力が)落ちることがないように、先ずはこの難しい初戦を乗り切ること。互いを信じて、サポートしあうことだ」と、緊急事態にも冷静にチームをまとめていた。

 キャプテンの長谷部誠(ヴォルクスブルグ)は「(本田が)明るく元気に振る舞っていた」と、チームの雰囲気をあえて明るくするように笑顔で離脱した本田の様子を代弁。「どんどん行けよ!と、やたら上から目線の指示でした」と笑った。そして「(本田が)戻ってきたらもうポジションがない、といういくらいに(競って)したい。アイツが出られないというのだから、本当にダメ(よほどひどい)なんでしょう」と、本田を思いやった。

 監督としても初体験の予選でのアクシデントに、選択肢はいくつかある。トップ下に、柏木陽介を入れる、または、W杯南ア大会と同じに、阿部勇樹をアンカーに据え、遠藤、長谷部の3ボランチ、3トップを香川真司、李忠成、岡崎慎司での並びにする形も考えられる。現有メンバーでの対応も十分可能で、31日、9月1日と、チームは北朝鮮対策をみっちりビデオ分析で行う予定だ。遠藤は、「先制点が大事。自分は雨は大歓迎」と、台風の接近が見込まれている悪天候も味方につけた。

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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