スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2011年8月30日 (火)

寺川綾「ロンドン五輪が初出場、そして最後だと思って」ロンドンで咲く-なでしこたちの挑戦(後編)

ロンドン五輪が初出場、そして最後だと思って

――それでは来年の話ですが、先ほど、「アテネはあまり思い出せない、周囲と自分のベクトルが違っていたように思う」とおっしゃっていましたね。ロンドンはどんな五輪になるでしょう。

寺川 アテネで決勝に進出して、世界という舞台は本当に最高の場所なんだと実感し、とても感動しました。でも自分がそこでメダル争いをするイメージは沸きませんでしたし、今回は2度目だからアテネの経験を活かして、といった感覚もありません。このロンドンが初出場なんだ、そんな気持ちで臨みたいと思っています。もちろん、国内で勝ってもいないのにそんなことを言うのはおかしいですが、もし出場できたら、これがオリンピック初出場、そういう気持ちで挑みます。

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――気持ちの上での初出場。

寺川 はい、そしてこのチャンスが恐らく私にとって最後のオリンピックになるでしょう。自分自身が納得できるレースをしたいんです。気持ちの中での初出場、そして最後のオリンピックだと決めて、自分らしい泳ぎをして力を出し切る。それが目標です。

――アテネのときの「オリンピックに出たい指数」はどうでしょうか?

寺川 今は、オリンピックに出たい、出て満足するのではなくて、世界で戦うんだ、とやっと、心から思えようになりましたから。今回は、たとえ周囲が10や12で「がんばればいいよ」「メダルじゃなくても」と言ってくれたとしても、私が、指数30とか40ですから。

――頼もしい。これから長い準備に入りますね。

寺川 やらなくてはいけないことがたくさんあります。今回の世界水泳の銀メダルを教えてくれた「世界との差」を、十分に活かしてトレーニングに取り組んで行きたいと思います。簡単ではありませんが、泳ぎ終わったときに、ああすればよかった、こうすればよかった、と思わないように。オリンピックで全力を出し切れた、と思えるように。

寺川 綾(てらかわ・あや)

1984年11月12日生まれ。大阪府出身。ミズノ所属。
3歳から水泳を始める。2000年4月、近畿大学附属高等学校入学。2003年同校を卒業。在学中の2001年に初の代表入りを果たすとその勢いのまま2004年にはライバル伊藤華英選手を破りアテネ五輪代表入り。近畿大学1年時に迎えたアテネ五輪では、200メートル背泳ぎで決勝に残るものの、あと一歩のところでメダルには届かなかった。アテネ五輪後、自分の力を出し切れない時期が続き、2008年北京五輪への切符を得ることは出来なかった。北京五輪後、日本代表ヘッドコーチとなった平井伯昌氏の門を叩くとその才能を再び開花させ始めた。ベスト記録を次々に更新し、2011年の世界選手権の50メートルで銀メダル。2012年のロンドン五輪を集大成と位置づける。

五輪における女子水泳(競泳)メダル獲得者

金メダル金メダリスト
前畑 秀子(女子200m平泳ぎ、1936年ベルリン大会)
青木 まゆみ(女子100mバタフライ、1972年ミュンヘン大会)
岩崎 恭子(女子200m平泳ぎ、1992年バルセロナ大会)
柴田 亜衣(女子800m自由形、2004年アテネ大会)

銀メダル銀メダリスト
前畑 秀子(女子200m平泳ぎ、1932年ロサンゼルス大会)
中村 真衣(女子100m背泳ぎ、2000年シドニー大会)
田島 寧子(女子400m個人メドレー、2000年シドニー大会)

銅メダル銅メダリスト
田中 聰子(女子100m背泳ぎ、1960年ローマ大会)
中尾 美樹(女子200m背泳ぎ、2000年シドニー大会)
中村 真衣、田中 雅美、大西 順子、源 純夏(女子4×100mメドレーリレー、2000年シドニー大会)
中村 礼子(女子200m背泳ぎ、2004年アテネ大会)
中西 悠子(女子200mバタフライ、2004年アテネ大会)
中村 礼子(女子200m背泳ぎ、2008年北京大会)

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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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