柳沢敦インタビュー(1)「GOOOOOOOAL!!~FWという生き方~」
生まれ変わっても、FWで
―FWの喜び
柳沢 それはゴール。100ゴールを取ったとき、Jリーグの1点目のことを、ふと思い出しました。1ゴール目も、100ゴール目も、やっぱり同じように、こんなにうれしいものなんだな、と噛み締めた。
―それは、何点取っても変わらない?
柳沢 そうでしたね。1点で、それまで動かなかった重い足が嘘のように軽くなってしまう。それは、自分だけではなく、チーム全体がそうなる。ゴールはまるで魔法のようですね。改めてそう感じました。
―ではピッチで嫌なことを。
柳沢 トラップミス。
―6人のFWでも初めての回答です。
柳沢 プロでやっていく上で、自分自身をよく知って、ここまでやってきたつもりです。ほかの選手のように強烈なシュートが打てるわけではないし、特別に上手いわけでもない。だからトラップをいかに正確にし、シュートを自分の体勢に持っていくか。これが、プロで生きていく上で全てでした。そこでミスをしたら、全てが終ってしまう。
―逆に、うれしいこと。
柳沢 意図が、絵になる瞬間。互いの意図を、互いが汲み取って、形にはなかったものが、パスや動きに変わって、その結果のゴールが生まれたときのそのうれしさといったら・・・言葉にできないくらい感動して、1点の喜びはまったく違った味わいになる。サッカーではよく、コミュニケーションを取れ、と言われますよね。もちろん大事なことです。でも、自分にとって本当に最高のプレーには、多分、言葉はいらない。
―FW柳沢敦とは?
柳沢 じれったいヤツ。
―笑っちゃいけませんね。
柳沢 FWらしくないFWというか、もの凄く期待しているとゴールを取れないのに、たとえば、あまり期待されていなかったのに、偉大な先輩たちに並んで100ゴールにたどりついていたり。良く言えば、いじらしい、ですか。
―FWとしての武器
柳沢 少し前までは、スピードとかタイミングと答えたと思うんですが、まぁ、そうも言っていられない歳にもなりましたしね。今はやはり、ゲームの流れの中で生きること、選手それぞれの特徴を掴んで、持ち味を最大限に活かしながら、自分もその中で生きることですね。周りとの呼吸とか、間合いとか、それを掴んでプレーをする。
―ゲン担ぎ
柳沢 全くしません。
―もし生まれ変わって、またサッカーをやるとしたら、やりたいポジション
柳沢 もう一回FW。
―MFかと。
柳沢 いや、今度は、サッカーを始めるところからFWとしてやり直してみたいですね。シュートに持って行くまでを、もっと、もっと丁寧に練習して。
―FWとしての信念は?生まれ変わっても変えませんか、やっぱり。
柳沢 ええ、次もやっぱり、頑固に行きますよ、ここは。FWにとって、ゴールだけが仕事ではない。
―では最後に、柳沢選手にとって、FWとはどういう仕事でしょう?
柳沢 難しい質問だなぁ。
―参考までに、今回の記事ですと、例えば、玉田選手は期待に応える仕事、興梠選手は天国と地獄、鄭選手は、一度やったら辞められない、麻薬のようなものだ、と表現していますね。かつてカズ(三浦知良)に話を聞いたときには、オセロ、と。
柳沢 オセロですか?
―ええ、自分の一手、つまりゴールで、白を一瞬にして黒に逆転することができる、そういう仕事だと表現していましたね。
柳沢 カズさん、さすがです。みんなの答えを聞いてしまうと余計に考え込んじゃう。
―ではインタビューの最後にまた聞きましょう。考えておいてくださいね。
柳沢 はい、そうします。