スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2010年4月 9日 (金)

岡崎慎司インタビュー(3)「GOOOOOOOAL!!~FWという生き方~」

二アに飛び込む、世界中の誰にも負けずに

―4年前のワールドカップの印象は?

岡崎 完全に一般のサポーターと同じ目線でしたね。オーストラリア戦やブラジル戦をテレビで観戦して、ヤベェ、日本負けちゃったよ、と頭を抱えているような。ブラジル戦で玉田さんが先制ゴールを奪ったときにはもうガッツポーズして、やったぁ!スゲエよ、とただ大喜び。代表に入ったとき、その玉田さんが目の前にいて、あ、あの玉田さんだよ、って興奮しましたね。一緒にトランプやっている今、時々、あれ、オレ何で、ここで一緒にトランプしてるんだっけ?と不思議な気分になることがある。

―それくらい、この一年が早かったのではありませんか?

岡崎 本当に。もう無我夢中の一言だった。1点取れないときには、国際大会じゃ通用しないレベルと批判され、1点取ったら、さぁワールドカップへ、と新聞の一面になる。それまでの自分は、批判されたこともない、ということは期待もされていない、ただのFW。でも代表FWの肩書きをもらったことで、初めてFWらしくなったんだと思う。日本代表のストライカーと呼ばれた途端、味わったことのないようなずっしり重いプレッシャーがのしかかってきたような感じで、だからといってそれが嫌なのではなくて、やりがいを感じられた。ゴールで結果を出すことに、初めて夢中になれたし、そこで自分が成長できるような気がしました。今は、常に得点王になりたい、なるんだ、と思っている。リーグで得点王になれなきゃ、国際舞台は無理。ゴールに向かうその気持ちだけは、絶対誰にも負けない。

―FWとして、本当の意味で目覚めたのも最近ですか。

岡崎 小学校4年まではディフェンダーでした。何故かFWに起用されることになったのは、たまたま同じチームのFWが引越しちゃったんですよ。それまでもセットプレーでは前に行くこともあったんで、じゃ、お前がFWな、って、そんなものでしたよ。そこでいきなりハットトリック。あの日の流れのまま来た感じですよね。

―4年前すらワールドカップに、という具体的な目標は持っていなかった?

岡崎 「キャプテン翼」の影響でワールドカップ、とは口にしましたけれど、深い意味を考えたわけではないし、むしろ、口走っていただけ、ってところでしょう。ワールドカップなんかよりも選手権だぜ、そういうタイプだった。海外サッカーへの憧れもありませんでした。テベスのプレーが好きだ、なんて思い始めたのは、つい最近のことですから。

―今ではサッカーもご覧になる。

岡崎 今は、必ず試合のビデオを見ることにしている。まあ特に、自分のプレー集5割で。

―そういうものでしょう。

岡崎 ここはダイレクトだった、ここはミス、トラップの位置や中に入るタイミングが悪い、といった反省を細かく修正できるヒントにしてます。

―ベストゴールではなくて、納得できたゴールが昨年のウズベキスタン戦とおっしゃっていましたね。

岡崎 体はよく動かせたと思うし、それを、ここで勝てばワールトカップが決まるっていう試合でやれたのは納得はできる。でも、それはアジアだから。もっともっと上の相手には、あれではまだ及ばないと思っているから、ベストにはまだ。

―理想のゴールは?

岡崎 ニアに飛び込んでのゴール。そのタイミング、スピード、速さで、世界では誰にも負けないゴールパターンを作りたいと思う。自分にしかできない形を、W杯や世界の舞台でやりたい。

―一生ダイビングヘッド、の思いは変わらないと思いますが、一方で、進化するFWという表現は印象的ですね。

岡崎 確かにダイビングヘッドは持ち味だけれど、でもそれだけでは足りない。ドリブルでの切り返し、ミドルのシュートや、前が開けば思い切ってロングもある。FWとしての色々なバリエーションがあって、それを身につけたいと思ってます。自分はまだまだ伸びるし、技術も身につく。

―南アに向けて、ストライカーとして大きな注目を浴びることについては?

岡崎 プレッシャーや批判が大きいほうがいいですね。我慢して我慢して、1ゴールで批判に答えを出す。正直、かなりのMです。

―海外のストライカーたちは、ムキだしの自意識をぶつけるようなこともありますね。

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岡崎 自分はゴールを外したり、パスが通らないと、あ、自分の動き出しが悪いんだ、とか、いいパスなのに読みきれなかった自分の力不足、とすぐに周りに気を使ってしまう。そういう自己主張を強くしないところが、人の話をすっと聞ける長所だったかもしれないけれど、逆に、オレが一番、自信たっぷり、そういうFWたちが羨ましいとも思う。

―もし夢が叶うとしたら?

岡崎 イングランド、スペインでプレーする。

―W杯前の出発でも、ファミリーで円陣を?

岡崎 したいですね。息子もどんどん大きくなっていて、この前は、ボールで遊びながら足の裏で引き技なんて真似するんですよね。これって、親ばかですかね。

―多分。

岡崎慎司(おかざき・しんじ)

1986年4月16日生まれ 兵庫県宝塚市出身
滝川第二高(兵庫県)卒業後、2005年に清水エスパルスに入団。現在に至る。ポジションはFW。2009年は代表として15得点をあげ、国際サッカー歴史統計連盟による世界得点ランキング1位に選出されている。Jリーグ通算29得点。国際Aマッチ通算16得点。174センチ、76キロ。


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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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