スポーツライター増島みどりのザ・スタジアム

2010年3月19日 (金)

前田遼一インタビュー(2)「GOOOOOOOAL!!~FWという生き方~」

点を取って、どうもスミマセン、と謝るFW

 カズ(三浦知良、横浜FC=代表89試合55得点)にこう教えられたことがある。もしも、ゴールラインを誰かが入れたボールがまたいでいたとしても、そこにいる限り、FWとしての自分は、そのボールを無理やり触って押し込んででも、自分のゴールにするだろう、と。

FWを、そんな良心の「エゴイストたち」と定義すると、Jリーグで7年ぶりに得点王の座を奪還した日本人FWはそこには属さない。何しろ、ゴールして謝る。

ベンチスタートで試合に出ていた当時、ピッチに入ると途端に、全体のリズムが崩れてしまうことがよくあった。相手へのプレッシャーのかけ方でミスし、ボールの受け方を間違え、ついにそこを狙われ失点を喫する。勝ちゲームを実にややこしくしてしまうため、藤田俊哉、名波浩といったまばゆいばかりの中盤に、激しく怒鳴られた。

オレのせいで負けたらどうしよう・・・だから点を取っても、「すみませんでした」と歓喜の輪で本音を告白してしまう。先輩にボコボコ叩かれ祝福されながら、「これで、プラマイゼロになりませんか?」と小声でつぶやいている。

日本人としては、大黒将志(現・横浜FC)以来6年ぶりに20点の大台に乗せたゴールのうち、「ベストゴール」(09年J1第11節大分戦)を選んでもらう。迷うことのなかった答えに、FWとしての生い立ちが分かりやすく浮かぶ。

Goal_maeda

 先ずはポストでボールを何とかキープし、左サイドへ。このときもDFのプレッシャーを受け、ほとんど倒れそうな格好だ。サイドからのクロスに合わせ、ヘディングでゴール前に落として、このボールをアシストにもらって、起点から7本のパスをつないでゴール。カッコよくもないし、彼の持つセンス、技術が光る「スーパーゴール」でもない。もしベストゴール集を誰かが作ったら、このシーンは恐らく入らないだろう。できるだけ多くのタイミングで、周りと自分が連動しながら、最後は自分で決める。それが理想。

ゴール直後も、ほかのFWに比べると、派手なアクションやアピールは控えめだ。試合後のコメントも非常に少ない。負けている場面ではないのに、ボールをネットからかき出してくるのも特徴だ。

FWに、なるべくして生まれた選手もいれば、後に、眠っていたFWとしての強烈な資質を覚醒させた選手もいる。前田は、どちらでもない。自分がプロとして生きる場と確信していたMFで弾き出され、黄金時代のジュビロにあって分厚いFWの壁にも何度も跳ね返され、安住の地は失ってしまった。最後の最後、生き残るために与えられたポジションである。理想には、MFだった自分、FWになろう、なろうと懸命に努力する自分、その両方の像が投影される。

「あの頃の感覚は、今も染み付いているんだと思います。ゴールしても勝てなかったら、次もFWとして出られるか分からない、という危機感に追いかけられるような気がして、負ければ外されるのは自分だ、と思ってしまう」

得点王が日本代表にいないなんて寂しい。


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増島みどり プロフィール

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。
98年フランスW杯代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞、「GK論」(講談社)、「彼女たちの42・195キロ」(文芸春秋)、「100年目のオリンピアンたち」(角川書店)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作も多数

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