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2010年3月19日 (金)
前田遼一インタビュー(3)

中山さんの勇気、高原さんの鋭さ、そして2人の執念を全て持ちたい

―新しいシーズンの目標は?

前田 昨年以上にゴールを取ることです。

―昨シーズンの得点王で、ご自分は一皮むけた、と感じますか?

前田 いえ、一部、ぺリッと。

―先ほど、器用貧乏と自己評価していましたが、昨年20点の内訳は、左足で7本、右足でも7本、ヘディング6本。十分過ぎるほど器用ではないのですか?

前田 昨年は、ポストプレーでもボールが足元に収まらなくて、もの凄く苦労した一年でした。何ででしょうね。ボールがちゃんと収まらないものだから、自分でキープして最後までというより、回りに活かしてもらい、回りと連動して、何とか崩そう、と考える。結果的には、その気持ちがこれまでとは違った動き方を工夫することにつながって20点になり、両足、頭とバリエーションに表れたのかもしれません。

―開幕直前、岡田武史監督が視察に来る、ここで認められればバーレーン戦の招集も、というチャンスがありましたがケガをされた。前田選手、どうも、こう、ガツガツしたところがないというか、無欲というか。

前田 もしオレに本当に誰をも認めさせる実力があるなら、あそこでケガはしないんです。自分には力がない。今の代表にもし呼ばれるとすれば、岡崎(慎司、清水)をいかに活かせる動きができるか、にかかってくる。岡崎の持ち味は、DFの裏に抜けるスピードとタイミングですから、自分がどれだけドシっと構えて彼の良さを引き出せるか。逆に、岡崎の動きには、仲間を活かすランニングがとても多いんですね。スペースを開ける仕事、DFを連れていく動き、それといかに絡むかもある。W杯代表に選ばれるための最後の可能性は、そこにあると思っています。確率は5%です。

―数字はどこから?

前田 10%はないだろう、という意味で。非常に厳しいけれど、昨年以上にゴールを奪う、という目標よりも早くやってくるものですから諦めない。最後までできる最善の努力をします。

―どういったFWが好きですか。

前田 日本人FWの動きは、いつもビデオで確認しますね。一度、ブラジルのロマーリオの、ペナルティエリアの少し外で反転しながらシュート、というもの凄いプレーを見て翌日練習で真似てみたんですが、ダメでした。ひざにきてしまいそうで、やめましたね。

―ピッチでやるんですね、一応

前田 はい、やって、こりゃダメだと。海外より、JリーグでほかのFWを見ることが、自分にとって一番の勉強になります。先ほどの岡崎だけではなく、佐藤寿人選手も本当にプレーがシンプルです。ダイレクト、ワンタッチのプレーが多く、それを簡単に見えるようにやっているところは、自分にもできれば、と思いますが、うまくいきません。

―3月3日のバーレーン戦では、本田圭佑選手がFWに近いポジションでプレーをしてゴールをあげましたね。FWとしてどう思うんでしょうか。

前田 本当にうまいなあ、と。

―FWの特長、持ち味をじっくり見て分析するのは、どこかMF的な視線ですね。MFだった自分もいつもいるんでしょうか。

前田 そう思います。多くの選手が絡んで最後にゴール、というのが理想であり好きなのは、MFでもFWでも満足したい、というちょっと欲張りなところがあるのかもしれませんね。ジュビロに入った時はMFでしたが、当時、自分はここでは浮いちゃっていると思いましたから。

―日本を代表するMFがずらりとそろっていましたね。

前田 ああ、ダメだ、この人たちと競争なんてあり得ないと。FWでやるしかない、しかも磐田でないとできないな、と思い始めたのは、アジウソン監督の時、とにかく前に張り付いてろ、動くな、と言われてからですね。中盤からはもの凄いパスが出てくる、FWには中山さんたちがいる。そういう中だからこそ、中途半端で武器のない自分も活かしてもらって、ここまで来られた。

―昨年のJリーグアウォーズでは、ステキなスピーチをされましたね。2人のお陰で今日がある、いつか並びたい、と。

前田 中山さんのプレーは、エッ、そこに飛び込むの?と、FWが見ていてもその勇気に驚かされ、高原さんの一瞬を見逃さないあの鋭さも見習いたい。となると、いいとこ取りしかないと思いますよね。スピーチの後、高原さんには、何かゴマすってんじゃない?なんて笑ってからかわれましたが、2人にゴマすっても何も出てきませんよね。

―そうですね。2人に並びたい、とあそこで言ったこともW杯出場への意欲になっているのではありませんか?20点をあげた得点王が日本代表にいないのは寂しいです。

前田 だから、最後まで諦めずにやるつもりです。得点王は誰もがなれるものではない、FWの憧れで、子どもたちの夢なんだと言われました。それは意識しています。

―最後に、もし願いを3つ、かなえてもらえるとすれば何を願うか教えてください。

前田 ジダンみたいになりたい。

―次は?

前田 俊足になりたい。

―本当に遅い?

前田 かなり。初めて代表に呼ばれたときの体力測定で、20メートルダッシュ、垂直跳び、1位を獲得しました。

―後ろから。

前田 はい。鈍足、瞬発力なしのFWってあり得ないと思います。

―最後の御願いは

前田 中学、高校時代から友達とカラオケに行くと、なぜかオレの歌を聴いたみんなが爆笑しちゃうんです。

―単に、音が外れているんでは。Img_interview01_2

前田 自分ではそうは思ってないんですけど・・・。鼻歌でも、オマエ、超下手ッくそだな、と笑われて。このところずい分盛り返してきたと自分では思っているんですが。前田って、すげえうまいよなぁ、と感激されるように人前でいつか歌ってみたい。



前田遼一(まえだ りょういち)
1981年10月9日生まれ 兵庫県神戸市出身
暁星高校卒業後、2000年にジュビロ磐田に入団。現在に至る。ポジションはFW。 2009年には、日本人として、2002年の高原直泰以来、7年ぶりとなるJリーグの得点王に輝く。Jリーグ通算84得点。国際Aマッチ通算2得点。183cm、80kg。
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この特集について
スポーツライター増島みどりによる南アフリカW杯レポート、選手へのインタビュー。

増島みどり プロフィール
1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年、フリーのスポーツライターに。サッカーW杯、夏・冬五輪など現地で取材する。著書も多く、速報サイト「ザ・スタジアム」も主宰している。

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